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『シコふんじゃった!』周防正行総監督x片島章三監督 相撲で活躍する女の子を描く【Director’s Interview Vol.265】

『シコふんじゃった!』周防正行総監督x片島章三監督 相撲で活躍する女の子を描く【Director’s Interview Vol.265】

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相撲という魅力



Q:30年経ち現代版にアップデートされてはいますが、映画が持っていた面白さも確実に引き継がれている。その魅力はどこにあるのでしょうか。


片島:たぶん相撲自体が面白いからだと思うんです。日本の伝統で国技であるにもかかわらず、若者はあまりやりたいと思わない。泥臭くて汗まみれで、太っていて女の子にモテない。そんなイメージのものを今の若者がやるギャップが面白い。本人たちは一生懸命やっているけど、周りにはそれがコメディに見えたりする。その面白さはあると思います。


Q:映画の時に入れられなかったエピソードを復活させるようなことはあったのでしょうか。

 

周防:入れられなかったエピソードがあったかどうか忘れちゃいました。当時、学生相撲そのものについては取材したのですが、決まり手など相撲に関するうんちくは、もともと相撲が好きだった僕の子供時代の引き出しにあるもの。竹中直人さん演じる青木が緊張すると下痢になるというのも、僕の中学野球部時代の先輩が試合の度に「またトイレだ!」と言っていたのから来ています(笑)。青木が話す相撲のうんちくも、全て僕の引き出しから持ってきたもの。子供のときはそれくらい相撲が好きだったんですね。



『シコふんじゃった!』© 2022 Disney


Q:映画の公開時は若貴ブームもあって、相撲は見ている人は多かったと思います。


周防:当時企画したときよりも公開後の方が盛り上がってくれて、まるで公開に合わせたかのようなタイミングでブームが来ましたね。


Q:今は残念ながら、そこまでの相撲ブームではないですね。


周防:学生相撲も人数が減っていて三部リーグの出場校自体も減っています。コロナもかなり影響を与えたと思います。


片島:裸でぶつかり合うスポーツですからね。コロナ的には色々難しい。


周防:そうなんです。だからしばらく稽古も出来ていませんでした。リモート稽古といって、OBも一緒に各自で四股を踏んだりしていました。僕は今、立教大学相撲部の名誉監督なんです。それで学生相撲にも少し詳しいのですが、この間ちょうど立教大学相撲部が三部リーグで全勝優勝したんです。一回も負けずに全部勝って、二部との入れ替え戦でも4勝1敗で二部リーグ復活を果たした。結果23連勝もしたのですが、本当にすごいなぁと思いました。非常にマイナーな世界ですが、こんなに大きな喜びがある。スポーツの喜びってこういうことなんだよなと、改めて実感しました。


Q:確かに裸でぶつかり合うスポーツってそんなに多くはないですよね。今回のドラマでもOBの汗だくの胸にぶつかる稽古シーンはすごかったです。

 

周防:あれは強烈ですよね(笑)。あれ見たら誰も「行きたくねー」って思いますよね。

 

片島:演出的に強調しましたが、でもあれが普通ですから。顔をくっつけて汗でぐちゃぐちゃになります。


周防:貴重な経験ですよね、普通に生活してたら裸で他人と密着することはない。でも相撲の世界ではそれが日常なんです。僕らの世代は、子供の頃に親や友達と相撲をとったりするのは日常的なことだった。だからそこまで違和感はありませんでしたが、今の子供や若い人たちにとっては、相当な違和感なんでしょうね。






原作・総監督:周防正行

1956年生まれ。東京都出身。立教大学文学部仏文科卒。1989年、本木雅弘主演『ファンシイダンス』で一般映画監督デビュー。修行僧の青春を独特のユーモアで鮮やかに描き出し注目を集める。再び本木雅弘と組んだ1992年の『シコふんじゃった。』では学生相撲の世界を描き、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。1993年、映画製作プロダクション、アルタミラピクチャーズの設立に参加。1996年の『Shall we ダンス?』では、第20回日本アカデミー賞13部門独占受賞。同作は全世界で公開され、2005年にはハリウッドでリメイク版も製作された。2007年の『それでもボクはやってない』では、痴漢事件を題材に刑事裁判の内実を描いてセンセーションを巻き起こし、キネマ旬報日本映画ベストワンなど各映画賞を総なめにした。2011年には巨匠ローラン・プティのバレエ作品を映画化した『ダンシング・チャップリン』を発表。2012年『終の信託』では、終末医療という題材に挑み、毎日映画コンクール日本映画大賞など映画賞を多数受賞。2014年の『舞妓はレディ』では、あふれるような歌と踊りとともに、京都の花街を色鮮やかに描き出した。2016年には、紫綬褒章を受章。2019年には、大正時代に大活躍した活動弁士たちを描いた『カツベン!』を発表。日本映画黎明期の青春群像を緻密な再現とアクションで活写した。





監督:片島章三

1959年生まれ。熊本県出身。CM制作会社勤務を経て、1987年『私をスキーに連れって』のエキストラ担当として映画作品に初めて参加。同年、『マルサの女2』ではサード助監督を務める。以降、多数の映画作品で助監督を務め、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)、や『学校の怪談3』(97)、『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)、『清須会議』(12)、『サバイバルファミリー』(17)など、怪獣映画からホラー映画、青春映画まで幅広く作品を担当。周防監督作品『それでもボクはやってない』(07)、『終の信託』(12)、『舞妓はレディ』(14)では、チーフ助監督として作品を支えた。『ハッピーウエディング』(14)では監督を務めた。並行して脚本研鑽も続け、1995年「シネマ100サンダンス国際賞―日本賞」にて優秀賞を受賞。1998年には、同賞で入選を果たしている。近年では『野球部員、演劇の舞台に立つ!』(18)の脚本を担当。『カツベン!』では、脚本・監督補も努めた。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





『シコふんじゃった!』

ディズニープラスにて独占配信中

© 2022 Disney


原作・総監督:周防正行

監督・脚本:片島章三、後閑広、廣原暁、植木咲楽

脚本:鹿目けい子

出演:葉山奨之、伊原六花、佐藤緋美、高橋里央、森篤嗣、高橋佳子、佐藤めぐみ、手島実優、福松凜、樫尾篤紀/竹中直人、清水美砂、田口浩正、六平直政、柄本明

企画・制作プロダクション:アルタミラピクチャーズ

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