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『そして僕は途方に暮れる』三浦大輔監督 映画を"映画として包む"【Director’s Interview Vol.274】

『そして僕は途方に暮れる』三浦大輔監督 映画を"映画として包む"【Director’s Interview Vol.274】

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豊川さんのラスボス感



Q:舞台を観客に観てもらうのと、カメラが捉えるのでは、演技もかなり違ってくるかと思います。その辺はどのように演出されるのでしょうか?


三浦:今回は、事前のリハーサルを1日設けて、作品の意図やセリフのニュアンスなどはそのときに役者に伝えました。もちろんその1日だけでは足りないので、あとは現場で演じてもらって調整していく。僕も実際にカメラを覗かないとニュアンスが合っているかどうかは分からない。特に“引き”と“寄り”で全然違うんです。引きは成立しても寄りだと感情を抑制する必要があったりと、調整に時間がかかりますね。その辺は編集を計算しながらやっています。


藤ヶ谷くんと前田さん、中尾さんに関しては、舞台からの続投なのですごく助かりました。とはいえ、舞台は3年ほど前のことだったので多少の助走は必要でしたが、すぐに当時の感覚を取り戻してくれた。基本的には舞台で演じていたものを軸に肉付けしていった感じです。



『そして僕は途方に暮れる』©2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会


Q:色んなキャラクターが出てくる中で、豊川悦司さん演じる自堕落な父親がとても印象に残りました。あそこまで開き直った人はそういない。


三浦:逃げる裕一は色んな人を渡り歩き、最後のラスボスがあの父親(笑)。たどり着いた最後の砦として、豊川さんはすごく存在感がありラスボス感も強かったですね。


Q:では最後の質問です。好きな映画監督や作品をお聞かせください。


三浦:映画表現として興味を惹かれたのは橋口亮輔さんの作品。学生時代から観てきた映画で一番影響を受けた監督さんです。リアリティの獲得の仕方や人間の繊細な描き方、そこに一番シンパシーを感じてすごく好きでした。なかなか寡作な方ですが、あれだけの熱量で映画を撮るのはしんどいでしょうね。橋口さんの新作を早く観たいですね。他には、作品的には伊丹十三さんの映画が好きでした。『お葬式』(84)のエンターテインメントと人間の描き方のバランスみたいなものがとても好きなんです。


また、今は若くて才能ある方がたくさんいますよね。皆すごいなぁと思います。




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監督・脚本:三浦大輔

1975年生まれ。演劇ユニット「ポツドール」を主宰し、センセーショナルな作風で演劇界の話題をさらう。2006年「愛の渦」で第50回岸田國士戯曲賞を受賞。2010年パルコ・プロデュース「裏切りの街」(作・演出/2022年に新国立劇場で再演)、2013年「ストリッパー物語」(原作:つかこうへい、構成・演出/シアターイースト)、2015年シアターコクーン・オンレパートリーで、ブラジルの巨匠ネルソン・ロドリゲスの戯曲「禁断の裸体」を演出し、高評価を得、2016年舞台「娼年」で演出家としての地位を確固たるものとする。「そして僕は途方に暮れる」(主演:藤ヶ谷太輔)舞台版は、2018年Bunkamuraシアターコクーンで上演された。最新オリジナル作は「物語なき、この世界。」(シアターコクーン/2021)。映画監督としては、2010年『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(原作:花沢健吾、脚本:三浦大輔)で商業映画監督デビューを飾り、2014年自作で岸田戯曲賞受賞作『愛の渦』を映画化する。2016年『何者』(原作:朝井リョウ)、2018年『娼年』(原作:石田衣良)で監督・脚本を務め、その演出力、表現力が高い評価を得た。また、パルコ・プロデュース公演の自作「裏切りの街」は2016年にdTVで配信ドラマ化。この作品は、異例の劇場公開も果たした。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『そして僕は途方に暮れる』

1月13日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

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