脚本の文法に縛られない
Q:監督ご自身は、いつもどうやって物語を紡ぎ出しているのですか?
ナリン:基本的にはパーソナルな視点でストーリーを作っています。そして、その物語のDNAは何なのか?それを常に探しています。
デビュー作の『性の曼荼羅』(01)は、脚本に忠実にアドリブ無しで作った作品でしたが、次の『怒れる女神たち』(15)は、インド都市部の女性たちが声を上げるという内容だったこともあり、あえて脚本は用意せずキャラクターだけを決めて即興で撮影しました。今回は資金集めのためにプロットだけは用意しましたが、書いたのは大人のセリフだけで、子供たちにはアドリブでやってもらいました。子供がセリフを話してしまうと、彼らから自然に出てくる美しさが損なわれてしまう。子供たちは自分がどんなキャラクターかを理解していて、そのキャラになりきってくれたので、アドリブをさせても自然でした。
「脚本とはこうあるべき」という文法がたくさんありますが、それに準じてしまうこと自体が脚本家の仕事を殺していると思います。脚本を組み立ててそれ通りに映画を作るということは、映画作りの一つのやり方にすぎないのです。昔は、役者やスタッフとビジョンをシェアするためだけに脚本を書けたのですが、今は製作費集めのために書かなければならない。その影響は大きいですね。
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※向かって左:パン・ナリン監督 右:ディール・モーマーヤー プロデューサー
監督・脚本・プロデューサー:パン・ナリン
インド共和国・グジャラート州出身。ヴァドーダラーのザ・マハラジャ・サヤジラオ大学で美術を学び、アーメダーバードにあるナショナル・インスティテュート・オブ・デザインでデザインを学んだ。初の長編映画『性の曼荼羅』(01)がアメリカン・フィルム・インスティテュートのAFI Festと、サンタ・バーバラ国際映画祭で審査員賞を受賞、メルボルン国際映画祭で“最も人気の長編映画”に選ばれるなど、30を超える賞を受賞し、一躍国際的な映画監督となった。BBC、ディスカバリー、カナル・プラスなどのTV局でドキュメンタリー映画も制作しており、“Faith Connections”(13・原題)はトロント国際映画祭の公式出品作品として選ばれ、ロサンゼルス インド映画祭で観客賞を受賞した。2022年にグジャラート州出身の映画監督として初めて映画芸術科学アカデミーに加入。他の代表作に『花の谷 -時空のエロス-』(05)、『怒れる女神たち』(15)などがある。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『エンドロールのつづき』
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配給:松竹
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