大学生の生活を描いた作品に傑作は多い。
社会に出る直前の若者たちが、最後の猶予とばかりにハメを外し続ける開放感や、その裏に見え隠れする不安など。花火のように儚く煌めく様子が、どうしようもなく、必然的に美しく描かれる。
映画大国インドにも、そんな大学生映画は存在する。インドは熾烈な学歴社会であり、また根強く残るカースト制度への意識があることに加え、人生において決定的な分岐になる時期を描くため、大いなるドラマを生むことに所以しているだろう。日本でも特大ヒットを飛ばした『きっと、うまくいく』(09)も記憶に新しいところだ。そんな大学生映画の傑作群に新たな作品が加わった。
『きっと、またあえる』である。
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大学生映画としての『きっと、またあえる』
アニとマヤはエリート大学として知られる工科大学で知り合い大恋愛の末結婚したが、今は別居中で互いに挨拶するのも気まずい関係である。そんな2人の息子ラーガヴも受験の時期。志望校は両親が学んだ工科大。ところが、のっぴきならない事態が起こりラーガヴは意識不明の重体となってしまう。
責任を感じたアニは届くかどうかも解らないまま、祈りにも似た思いでラーガヴにマヤと知り合った学生時代の話を始める。
1992年。新入生アニの住居にあてがわれたのはボロボロの4号寮。エアコンは無いし寮付き食堂の料理人は料理がヘタだし、入寮した学生たちはこぞって他の寮への転入を申し込んでいる。ただ4号寮には気のいい先輩ばかりが住んでいた。ヘビースモーカーのデレク。セックスに気を取られっぱなしのセクサ。口の悪さは校内イチのアシッド。常に酔っ払っている万年浪人のへべれけ。アニと同じ新入生でマザコンのマミー。
厳しい上下関係が無い、居心地の良いゆるーい4号寮だが、入寮している学生たちは校内で「負け犬」と呼ばれていた。年に1回行われる、寮対抗の多種目競技(バスケ、サッカー、重量挙げ、カバティ、チェス、カロム)で毎年最下位の座に居続けているからだ。しかし、スポーツ万能なアニの入寮により「負け犬」の汚名を返上するチャンスと色めき立つのだった。
そんな話を病床で意識なく横たわるラーガブにするアニの元へは、かつての「4号寮」の仲間たちが集まってくる。というのが『きっと、またあえる』のあらすじだ。
映画はアニの学生時代をメインとしながら、現在の状況や心境をシンクロさせていく。現在と過去を同時に描いていく本作は、映像でしか表現し得ない描写に溢れ、実に「映画らしい映画」になっている。
監督には『ダンガル きっと、つよくなる』(16)で、多くの鑑賞者の涙を絞り取ったニテーシュ・ティワーリーがあたり、今回もスポーツドリンク必須の脱水覚悟な大落涙作品に仕上げている。
主演は『PK』(14)でヒロインの恋の相手を勤めたスシャント・シン・ラージプートと、ハイパーメガ超大作『サーホー』(19)で“バーフバリ”プラバースの向こうを張ったシュラッダー・カプール。2人が学生時代の初々しい恋模様を演じるのも見所である。