2019.09.06
※2019年9月記事掲載時の情報です。
『ヒンディー・ミディアム』あらすじ
インド・デリーに住むミドルクラスの夫婦ラージ(イルファーン・カーン)とミータ(サバー・カマル)は、衣料品店の経営で成功を収めているが、妻のミータは学歴コンプレックス。教育は社会的地位を向上させ、運命を変えると強く信じて疑わない。一人娘のピアに、よりよい人生を歩んで欲しいと願い、富裕層向けの有名校に進学させることにした。娘が上流社会入りできるよう、両親は娘と共にお受験クラスで面接のノウハウや試験のコツを学び、高級住宅地へ引っ越して富裕層のふりまでして必死に受験を迎えるが、なんと結果は全滅。落胆する2人だったが、とある有名校が低所得者層のための入学枠を設けているという情報が舞い込む。わらをも掴む思いの彼らは、下流層が暮らす地区に家を借りて貧乏を装い、ついには不正行為も辞さず、有名校の低所得者層枠での入学を試みる。夫婦は愛する娘のためにあらゆる手を尽くすし、お受験戦争はどんどんエスカレートしていくが・・・!?
Index
これぞ映画の醍醐味!
例えば、『スター・ウォーズ』(77)では、砂漠のど真ん中で叔父さんの農業の手伝いをさせられている若者が、銀河を支配する帝国との戦いに巻き込まれ、様々な星や巨大要塞を渡り歩くことになる。『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(09)では、いなくなった友人を探すためラスベガスの街を隅々まで巡るハメになる。『ドクトル・ジバゴ』(65)ではロシア革命に巻き込まれた医者ユーリの人生を追いながら、上流階級の暮らしから陰惨な戦場、爪に火を灯すような赤貧の生活までを描いていく。
優れた映画の多くは、それがどんなジャンルであっても、様々な世界や社会を観せてくれるものである。宇宙での大冒険や、享楽的な街の裏表、戦争や圧政がもたらす社会の軋轢までを、遊園地のライド型アトラクションのように映画館の座席に座るだけで体験出来る。これぞ「映画」の醍醐味そのものだと言ってしまって良いだろう。
年間2000本前後の新作映画が作られていると言われる映画大国インドにも、そんな作品が数多くあるが、残念ながら日本にはあまり“輸入”されていない。されていたとしても、非常に厳選されたごく一部の作品である。しかし逆に言えば、日本で鑑賞出来るインド映画は、公開年の2000本の中を“勝ち抜いた”、面白さが保証された作品だという証左でもある。
『ヒンディー・ミディアム』予告
そして、公開年のインド映画賞を席巻した、確実に面白い作品が日本公開される。それが『ヒンディー・ミディアム』である。この作品が観せてくれるのは、インドに根強く残る格差社会だ。