1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『レジェンド&バタフライ』大友啓史監督 配信隆盛の世に訴える、劇場観賞の快感【Director’s Interview Vol. 277】
『レジェンド&バタフライ』大友啓史監督 配信隆盛の世に訴える、劇場観賞の快感【Director’s Interview Vol. 277】

『レジェンド&バタフライ』大友啓史監督 配信隆盛の世に訴える、劇場観賞の快感【Director’s Interview Vol. 277】

PAGES


配信の時代に、映画の原点・京都で撮る意義



Q:先ほどのパノラマしかり、大画面映えするカットが多いのも、本作の特長のひとつです。冒頭の信長がやぐらを上っていくシーン等も、象徴的でした。


大友:僕が2021年の『るろうに剣心 最終章』公開時に散々悔しい思いをしたように、映画館がコロナ禍で追い込まれ、配信がその間にどんどん台頭し、映画も家で観る動きがどんどん加速しましたよね。そんなタイミングで今回のお話をいただいたので、最初に僕の頭の中に浮かんだフレーズは「みんなが配信に向かうから僕は映画の原点・京都に向かいます」でした。


このまま映画が、劇場がダメになるんじゃないかと思っていた時期にいただいた話でしたから、今回はとりわけ小細工を考えずに、「映画」に真正面から取り組みたいと考えましたね。手ざわりとしては今の時代に『ゴッドファーザー』みたいな作品を作れないだろうかと思っていて、そこに東映創立70周年というエクスキューズが付いたような形です。



『レジェンド&バタフライ』©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会


Q:まさに原点回帰の想いがあったのですね。


大友:クランクインの3ヶ月前くらいから、京都撮影所で撮られた映画を浴びるように観返しました。プログラム・ピクチャー全盛期(1950~70年代)の映画ってパワーがあって、忙しくて準備期間もないのに今だったら絶対できないような映像がたくさんあるわけです。そうした「映画のパワーとは何か?」を再確認したいのと、それがちゃんと届くといいなという想いがありました。それは、尺も含めてですね。


いま、映画館で観る大作映画は、少なからず尺が長くなる傾向にありますよね。ハリウッドの製作者たちと話していても「差別化です」とはっきり言う人も少なくない。自宅などでネット上で映画を観る人たちは3時間に耐えられないけど、劇場の大スクリーンで観る映画については、IMAXやDOLBYでの上映含め、お金をちょっと高く出してもいいからじっくり観たいという流れも明確に出てきています。そういう観られ方に耐えうることもイメージしながら作ったのが『レジェンド&バタフライ』です。


物語自体は小さいから逆に面白いなという思いもありました。先ほどおっしゃっていただいた日常の映画であり、長屋ものの夫婦の話のようなイメージ。ただその対象がつましく暮らす夫婦じゃなくて、一国の運命を握るカリスマ武将の信長と、その正室の濃姫だった。とすればこの人の一挙手、一投足が時代の流れというものに大きく関わってくる。そう考えると、長屋的な狭い画で撮っているだけでは伝わらなくなるから、大きなシーンが必要になってくるわけです。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『レジェンド&バタフライ』大友啓史監督 配信隆盛の世に訴える、劇場観賞の快感【Director’s Interview Vol. 277】