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『それでも私は生きていく』ミア・ハンセン=ラヴ監督 実体験とフィクションが融合する【Director’s Interview Vol.311】

『それでも私は生きていく』ミア・ハンセン=ラヴ監督 実体験とフィクションが融合する【Director’s Interview Vol.311】

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レア・セドゥの纏う、真実の悲しみ



Q:あなたはこの映画で「レア・セドゥに新しい光を当ててみたかった」とおっしゃっていますが、たしかにこの映画の彼女は、これまで見たことがないほどに素の魅力を差し出している気がします。


ミア:彼女は大きな謎を纏っています。よく覚えているのは、サンドラがクレマンのオフィスに行って、初めてふたりがキスするシーンのときの撮影です。レアはとても経験豊かな俳優で、これまでラブシーンも多く経験してきたはずなのに、いきなりそのシーンで固まってしまったのです。それはとても心を動かされる光景でした。映像でははっきり見えないかもしれませんが、彼女は実際に赤くなっていました。撮影を通して彼女の内気さ、純粋さが感じられ、感動的な光景でした。



『それでも私は生きていく』


Q:レア・セドゥを選んだ理由として、ご自身とどこか共通する部分があると感じたのですか。


ミア:とくにわたしと似ているところがあると思ったわけではありません。でも彼女にはとても惹かれるところがあります。どこか悲しみやメランコリーを抱えている。それがなぜなのかは、わたしにはよくわかりませんが、彼女はスクリーンにその悲しみをもたらします。そこに取り繕ったものはありません。今回始めて経験したのですが、撮影中レアを観ていて、感極まって泣いてしまったのです。これまで男優にはそういう経験がありましたが、女優を観て泣いたことは初めてでした。彼女の悲しみは演技ではなく、生身のもの。あれほど経験豊かにもかかわらず、そこに俳優としての計算はなく、純粋さを持ち続けているのは驚くべきことです。


さらに彼女の特別なところは、演技に偉大な率直さがあること。ボンドガールをはじめこれまで世界的にいろいろな役柄を演じてきたものの、まるでロベール・ブレッソンの映画に出てくる素人の俳優のような印象を持ちました。とてもミニマリスト。うまく演じようとか、魅力的に見せようというところがまるでない。俳優と仕事をするときは、演じすぎないように、できるだけ控えめに、といった指示を出すことが多いのですが、彼女には何も言う必要がありませんでした。たぶん彼女はキャリアの最初からそうだったと思いますが、いまだに変わっていないのは素晴らしいと思います。




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