エリック・ロメールに影響を受けて
Q:あなたはエリック・ロメール映画のファンを自認していますが、父親役のパスカル・グレゴリーの選択は、その影響がありましたか。
ミア:はい、ずっと彼と仕事がしたいと思っていました。ロメールの映画のなかで、彼はいつもエレガントで、話し好きなキャラクターを体現してきました。だからわたしにとっては、彼が父親役を演じることで、このキャラクターが知的で、言葉を操る人だということを自ずと表現できると思ったのです。たとえ現在は病のせいで話せなくなっているという設定でも、観客はそれを感じることができるだろうと。ロメール映画のパスカルをよく知らない人にとってもです。
それにパスカルにもどこかメランコリーがあって、そこにわたしは惹かれます。さらにもうひとつの理由として、彼がわたしの父に似ているということもあります(笑)。そうしたすべての理由で、彼にこの役を演じてもらうのはわたしにとって明白で、脚本の段階から彼を念頭に書いていました。彼はわたしが録音していた父親の声のテープを聴いて、父の話し方のリズムなどを参考にしてくれました。彼の演技にも、とても心を動かされました。
『それでも私は生きていく』
Q:本作のラストシーンには、ちょっとロメールの『緑の光線』のラストシーンを彷彿とさせられました。ぬくもりと希望に満ちているような。
ミア:あの映画には大いに影響されていますし、あのラストシーンはわたしも大好きです。わたしはつねに光に向かって進むような前向きな作品を撮りたいと思っています。自分自身もそれによってポジティブな気持ちにさせられるような。父親の悲劇の悲しみを超えて、サンドラが希望を見つけるような終わり方にしたかったのです。
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監督・撮影・編集:ミア・ハンセン=ラブ
【主な監督作&受賞歴】すべてが許される(07)ルイ・デリュック賞、あの夏の子供たち(09)第62回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 審査員特別賞、グッバイ・ファーストラブ(10)第64回ロカルノ国際映画祭 特別賞、EDEN/エデン(14)、未来よ こんにちは(16)第66回ベルリン国際映画祭 銀熊(監督)賞、Maya(18)、ベルイマン島にて(21)、それでも私は生きていく(22)第75回カンヌ国際映画祭 ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞【主な出演作】8月の終わり、9月の初め(98/オリヴィエ・アサイヤス監督)、感傷的な運命(00/オリヴィエ・アサイヤス監督)、イングマール・ベルイマンを探して(18/マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)
取材・文:佐藤久理子
パリ在住、ジャーナリスト、批評家。国際映画祭のリポート、映画人のインタビューをメディアに執筆。著書に『映画で歩くパリ』。フランス映画祭の作品選定アドバイザーを務める。
『それでも私は生きていく』
5月5日(金・祝)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:アンプラグド