『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』ジェームズ・マンゴールド監督　スピルバーグが言った重要な言葉とは【Director’s Interview Vol.325】

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2023.06.29わたなべまき

スピルバーグが言った重要な言葉

Q：本シリーズをずっと監督してきたスピルバーグの助言で、常に心掛けていたことがあれば教えてください。

マンゴールド：スティーブンとはたくさん話したよ。さまざまなアイデアについて何時間も話したり、メールをしあったりした。私が撮影したデイリー素材にも必ず目を通していたし、私がいる編集室を何度も訪れたから、本当に密に接していたんだ。そういうなかで、彼に言われたもっとも重要な言葉は「自分にとって『インディ・ジョーンズ』という作品は予告編のような映画。2時間の予告編を撮っているようなものだ」ということ。確かに、スティーブンの撮ったこれまでの4本はペースが速くて長すぎるシーンはひとつもなく、映画そのものが、作品自体をひっきりなしに推し進めているような感じだ。私は彼のこの言葉を片時も忘れないようにしてメガホンを取っていたんだよ。

Q：ハリソン・フォードとの仕事はどうでしたか？

マンゴールド：彼が素晴らしいのは、最初の『レイダース／失われたアーク《聖櫃》』（81）の頃から、体重が1ポンド（およそ500g）も増えていないところ。ボディの美しさもキープしていた。だからインディの衣装は同じサイズでよかったんだ。映画の冒頭は1944年なのでインディは38歳くらい。その若いルックスを作るために使ったのはCGだけじゃなく、これまでの映像も使用した。スティーブンが撮った映像にテクノロジーを加えて38歳のインディを作り上げたんだ。

Q：本作は、ハリソン・フォード扮するインディ・ジョーンズの最後の冒険と言われています。あなたは『LOGAN/ローガン』でもウルヴァリンの冒険を美しく終わらせていました。そのときの経験が本作でも活かされたのでしょうか。

マンゴールド：確かにどちらの作品もヒーローの晩年を描いているけれど、ふたつはまるで違うトーンだ。『ローガン』はバイオレントで鎮魂歌的な要素もあった。『インディ』はもっとライトだから。ただ、そういうラストを飾るという責任については、どちらとも深く考えさせられるものだった。そういう重大な使命を全うするために何をするのか？　それに関してはやはり『ローガン』での経験は活きていたかもしれない。

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監督：ジェームズ・マンゴールド

1963年米ニューヨーク出身。カリフォルニア芸術大学、コロンビア大学で学んだ後、1995年に『君に逢いたくて』(日本未公開)で監督デビュー。『コップランド』(97)、『17歳のカルテ』(99)、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)などを手がけた後、2007年に西部劇『3時10分、決断のとき』を発表し高評価を獲得した。2013年にはマーベルの人気キャラクターを主人公にした『ウルヴァリン:SAMURAI』を、続く2017年に『LOGAN/ローガン』を監督。2019年には実話を基にした『フォードvsフェラーリ』を手がけ、アカデミー作品賞候補になった。父は美術家・画家のロバート・マンゴールド。

取材・文：わたなべまき

映画ライター。『TVブロス』『SFマガジン』『アニメージュ』等に執筆中。押井守監督の日本人論「押井守のニッポン人って誰だ!？」では編集と執筆を担当した。