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『ダンサー イン Paris』セドリック・クラピッシュ監督 描かれたことのないダンサーのドラマを撮りたかった【Director’s Interview Vol.350】

© Emmanuelle Jacobson-Roques

『ダンサー イン Paris』セドリック・クラピッシュ監督 描かれたことのないダンサーのドラマを撮りたかった【Director’s Interview Vol.350】

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スパニッシュ・アパートメント』(02)、『ロシアン・ドールズ』(05)、『ニューヨークの巴里夫』(13)の3部作に代表されるように、青春映画の傑作が多いフランスの名匠、セドリック・クラピッシュ監督。そんな彼がもうひとつライフワークにしているのが「ダンス」である。これまでもパリ・オペラ座のダンサーを見つめたドキュメンタリーや、振付家に迫る映像作品などを手がけてきたクラピッシュが、そのダンス愛を詰め込んだ新作を完成させた。


『ダンサー イン Paris』は、オペラ座のエトワール(トップダンサー)を目指すエリーズが、本番中のケガによってダンサー生命を絶たれそうになる物語。クラシックバレエの世界で挫折を経験した彼女が、コンテンポラリーダンスという新たな世界で自分を発見していく。エリーズ役に、実際にオペラ座で踊るマリオン・バルボーを起用。映像としてもストーリーとしてもダンス映画の魅力を最高レベルで極めたセドリック・クラピッシュ監督に、その思いを聞いた。


Index


『ブラック・スワン』はダンス映画として疑問



Q:パリを舞台にした人間ドラマを得意としてきたあなたが、ダンスファンというのは知りませんでした。ダンスを好きになったきっかけから聞かせてください。


クラピッシュ:たしか14歳か15歳の頃だったと思います。パリの市立劇場の観客パスポート、今で言う「サブスク」会員証を持っていて、コンテンポラリーダンスの上演を毎回観に行っていました。それがダンスとの出会いですね。1970年代から1980年代にかけて、カロリン・カールソン、ピナ・バウシュといったダンサーが精力的に活躍しており、そこに魅了されたわけです。


Q:舞台に魅了され、自身がダンサーになる夢を抱いたりは?


クラピッシュ:いや、私はパーティで踊る程度で十分(笑)。ダンスを習ったことはありません。



『ダンサー イン Paris』© 2022 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA


Q:ダンサーを主人公にした映画で触発されたものはありますか? ナタリー・ポートマンのダンスシーンをプロの動きに差し替えた『ブラック・スワン』(10)はあまり好きではないとか……。


クラピッシュ:過去の作品からは、ほとんど影響を受けていません。ダンスを本格的に扱ったフィクションの映画はあまり多くない、というのが私の感覚です。ダンスの名シーンといえば、1940年代、1950年代のミュージカル映画が思い浮かびます。『雨に唄えば』(52)、『ウエスト・サイド物語』(61)が代表的でしょう。ただ、それらの作品はダンスについての映画ではなく、ダンスを通してフィクションのドラマを語るスタイル。『ブラック・スワン』は、たしかに私にとってダンス映画の悪い例です(笑)。だから影響は受けませんでしたね。


Q:フランス映画では『ポリーナ、私を踊る』(17)でもダンサーの主人公に現役のプロダンサーを起用した例があります。


クラピッシュ:『ポリーナ』に先を越された、という思いはありません。今回の作品で私が言いたかったことは、これまでの映画で描かれなかったストーリー。ダンスそのものを映像として提示したうえで、踊る喜び、楽しさを観客に伝える作品は多くなかったので、そこを私は追求したわけです。今回、クラシックバレエ、ヒップホップ、コンテンポラリーという3つのダンスを、撮影方法を変えながら映像に焼きつけました。3つのジャンルそれぞれの「観る楽しみ」を観客に味わってほしかったのです。




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