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『シェアの法則』脚本・プロデューサー・出演:岩瀬顕子 “記録を記憶に残す”エンターテインメントの役割【Actor’s Interview Vol.34】

『シェアの法則』脚本・プロデューサー・出演:岩瀬顕子 “記録を記憶に残す”エンターテインメントの役割【Actor’s Interview Vol.34】

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“記録を記憶に残す”エンターテインメントの役割



Q:シェアハウスを舞台にしたコメディがベースにありつつ、家庭内暴力や引きこもり、震災のトラウマ、LGBTQ、外国人労働者など、様々な社会問題にも触れられています。ご自身が主宰されている劇団でも戦争などをテーマにすることが多いそうですが、そういった社会問題を演劇や映画で取り上げる理由を教えてください。


岩瀬:20代の頃の私は、戦場を経験した元兵士の人たちに体験談を聞いて、それを残していくという活動をしていました。第2次世界大戦を経験された日本人の方に話を聞くことが多かったのですが、一方で従軍したアメリカ人に話を聞くと内容が全く違ってくる。日本で学ぶものとアメリカで学ぶものでは、戦争観がまるで違うんです。通っていたアメリカの大学では、中国人や韓国人の友達もいましたが、彼らが自国で学んできたものとも当然違う。果たして実際はどうだったんだろうかと、すごく疑問に思い、戦争を経験された多くの方々に話を聞いてまわりました。被害的な話もあれば、加害的な話もある。皆さんちゃんと話してくださるんです。これはしっかり伝えていかなければいけないと強く思いました。それで、初めて脚本執筆の依頼がきた時に、戦争を背景にしたものを書いてみたんです。演技学校の若い学生の公演のために書いたのですが、若い人たちがこれをやることの意義を強く感じました。私たちの世代でさえ又聞きで知ることも多く、戦争を体験された方はどんどんいなくなっていく。戦争という負の経験が薄れてしまい、同じことが繰り返されることは絶対に避けたい。それで脚本を書き始めた最初の頃は、戦争をテーマにすることが自然と多くなりました。


その後は差別問題や介護問題なども取り上げるようになるのですが、そういった社会問題だけを扱ったものは、観ていて辛くなることもあるし、本当にそれだけを見たいのであればドキュメンタリーでも良い。でも、笑ったり泣いたり、感動したりして感情移入するからこそ、そこで描かれていたものが改めて記憶に残る。それこそがエンターテインメントだと思ったんです。楽しめて笑える部分もいっぱい作った上で、戦争がもたらす悲劇もちゃんと描き、観てくれた皆さんに何か持って帰ってもらいたい。これまでそういう思いで作ってきました。



『シェアの法則』岩瀬顕子(脚本・プロデューサー・出演)


また、公害問題を扱った舞台の経験もあったので、『MINAMATA―ミナマタ―』への参加は運命めいたものを感じました。私が演じた母親役は実在の方がモデルになっているのですが、見た目やタイプは私とは全く違うんです。それでも選んでいただけたので驚きました。向こうのオーディションは、自己PRも何もなく、ただセリフを言うだけ。私が今までやってきた“何かを伝えたい”という気持ちを感じてもらえたのかなと。


MINAMATA―ミナマタ―』を観た方の多くは、ジョニー・デップを観に行く、エンタメを観に行くという目的だったのかもしれませんが、観た後には何かを感じてくださって、公害を知るための勉強や支援など、実際に行動に移した方もいたそうです。「記録を記憶に残す」ということがエンターテインメントの役割なのかなと、そのときに改めて思いました。社会問題に対するメッセージを作品に入れて、エンタメの形で伝えていきたい。そうやってずっと作品を作り続けていきたいですね。




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