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『サタデー・フィクション』ロウ・イエ監督 現実やフィクションに懐疑的になるべき【Director’s Interview Vol.373】

『サタデー・フィクション』ロウ・イエ監督 現実やフィクションに懐疑的になるべき【Director’s Interview Vol.373】

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1941年、太平洋戦争開戦前夜。各国のスパイが暗躍する上海を舞台にした『サタデー・フィクション』は、まるでスクリーンが結露するかのごとくノワールの空気で充満している。監督は『パープル・バタフライ』(03)、『シャドウプレイ』(18)を手掛けたロウ・イエ。主演には今や世界的俳優となったコン・リー、脇を固めるのは、パスカル・グレゴリーにオダギリジョー、中島歩と、国際色豊かなキャストたちだ。


ロウ・イエ監督は何を思いこの時代を描いたのか? ノワール色を際立たせるモノクロはいかにして生み出されたのか? 監督に話を伺った。



『サタデー・フィクション』あらすじ

1941年、日本軍の占領を免れた上海の英仏租界は、当時「孤島」と称されていた。魔都と呼ばれるこの上海では、日中欧の諜報部員が暗躍し、機密情報の行き交う緊迫したスパイ合戦が繰り広げられていた。日本が真珠湾攻撃をする7日前の12月1日、魔都上海に、人気女優のユー・ジン(コン・リー)が現れる。新作の舞台「サタデー・フィクション」で主役を演じるためだ。一方、この大女優ユー・ジンには、幼い頃、フランスの諜報部員ヒューバート(パスカル・グレゴリー)に孤児院から救われ、諜報部員として訓練を受けた過去があり、銃器の扱いに長けた「女スパイ」という裏の顔があった。そして2日後の12月3日、日本から海軍少佐の古谷三郎(オダギリジョー)が海軍特務機関に属する梶原(中島歩)と共に、暗号更新のため上海にやってくる。ヒューバートはユー・ジンに告げる。「古谷の日本で亡くなった妻は君にそっくりだ」と。それは、古谷から太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るためにフランス諜報部員が仕掛けた“マジックミラー計画”の始まりだった……。


Index


現実やフィクションに懐疑的になるべき



Q:第二次大戦下(直前)の上海はこれまでよく映画の舞台になってきました。監督自身も『パープル・バタフライ』で描かれていますが、この時代をどう捉えていますか。


ロウ:この時代は、中国の映画やTVドラマでもよく描かれていて、当時を扱った小説や演劇もたくさんあります。まさに中国が現代に入っていく、時代の転換点。間もなく大激動が始まるのに皆それを知らずに生きている。そんな人たちを撮りたいと思いました。



『サタデー・フィクション』©YINGFILMS


Q:劇中劇の入れ子構造、虚実の曖昧な境界線が面白いです。この着想はどこからきたのでしょうか。


ロウ:現実とフィクションの曖昧な境界線を描くことは、映画や演劇の手法としては珍しくはありません。しかし現実とフィクションの両方に対して疑いを持つことは、映画を構成する上で非常に面白い考え方だと思いました。映画の人物は現実の中にいるのか?それとも虚構の世界に生きているのか?そもそも現実やフィクションに対して懐疑的な考え方を持つことは、今日とても重要なことだと思います。


例えばユー・ジンの場合、自身の身分や立場というものに対して懐疑的にならざるを得ない。ユー・ジンとバイ・ユンシャン(女スパイ)の関係、ユー・ジンとその恋人タン・ナー(演出家)の関係も、非常に曖昧です。




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