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『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』大島新監督 現実と虚構を織り交ぜた手法の先に天才・唐十郎の素顔は見えたのか?【Director’s Interview Vol.459】

『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』大島新監督 現実と虚構を織り交ぜた手法の先に天才・唐十郎の素顔は見えたのか?【Director’s Interview Vol.459】

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「なぜこの芝居に心を打たれているのか?」-唐十郎の魅力-



Q:そもそも大島さんの唐さんへの興味はいつから始まったんですか?


大島:僕は学生時代にちょっとだけ芝居をかじっていまして、今の妻と一緒にやっていたんです。それで紅テント(唐組の公演)を何回か観に行く機会があって、「すごいな」というのは当時から思っていたんです。


普通の劇場のものとは全く違う世界。当時はつかこうへいさんも結構好きで、勿論すごいんだけど、紅テントはまた全然違う。演劇だけど、もう本当に「紅テント」っていうジャンルのような感じがしましたね。


Q:私は紅テントでの公演を観たことがないのですが、芝居にストーリーはあるんでしょうか?


大島:あります。あるけど、全部理解して把握できるお客さんは相当少ないと思います。僕もかなり観ていますけど、唐さんの芝居を完全に理解できたと思ったことは一度もないです。ただ、「自分がなぜ心を動かされているかは分からないけど感動している」みたいなことってあるじゃないですか。その感覚がすごいんですよ。ベタな感情の動きとちょっと違う。なぜ今僕はこの芝居に心を打たれているのかが分からないのに、めちゃくちゃ持っていかれるみたいなことが結構あるんです。


今回の映画の中に出てくる「行商人ネモ」という芝居でも、主演の稲荷さんが最後に「ノーチラス!」って言うんですよね。「え?」みたいな感じなんだけど、すごく持っていかれる。



『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』(C)いまじん 蒼玄社 2007


Q:唐さんは自分のことを「偏執狂」と表現されていますが、その唐さんを見る行為がホラー映画に近いと感じました。感情の振れ幅が予測を超えてくるから目が離せない。ドキドキしながら追いかけてしまう。それがある種の見どころになっていますよね。


大島:ちょっと前にNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で庵野秀明さんの回があって、あれを観た時にちょっと思い出したんですよね。ディレクター、しんどいだろうなと。それに近い。例えば宴会をやるじゃないですか。カメラが回っていたり回っていなかったりするんですけど、酒の味がしないんですよ。劇団員もみんなそうらしいです。唐さんからいつ、どんな言葉が飛んで来るか分からない。しかも唐さんが発する言葉で「え?」っていうのが結構ある。しかも早口だし、ちゃんと聞いていないと返せない。


何度かロケに行っているうちに気づいたんですが、唐さんが言った言葉が自分の記憶では再現できないんです。それは何故かと言うと、語彙とか、言葉と言葉の繋がりが想像できないものだから。例えば小さい子供がすごく面白いことを言ったけど、それを少し経ってから大人が思い出して繰り返そうとしてもできなかったりする、そういう感じです。


Q:普通だったら文脈で思い出せるけど、文脈が常人と違うから思考を辿れないんですね。


大島:だから被写体としてすごく難しい。例えば『なぜ君は総理大臣になれないのか』で取材した小川淳也さん(衆院議員)は僕と文脈が近いから、そういうストレスはないんですよね。


Q:撮っていても、はたして映画になる素材が撮れているのか、わからなくなりそうですね。


大島:ただ、見た目が面白いから映像としては面白い。そこはやっぱり俳優なんですよね。




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