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『ぶぶ漬けどうどす』冨永昌敬監督 × 企画・脚本:アサダアツシ 突き進む主人公はいかにして生まれたのか【Director’s Interview Vol.492】

『ぶぶ漬けどうどす』冨永昌敬監督 × 企画・脚本:アサダアツシ 突き進む主人公はいかにして生まれたのか【Director’s Interview Vol.492】

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突き進む主人公はいかにして生まれたのか



Q:まどかのキャラクターはどのように作られたのでしょうか。


冨永:僕は映画を作るとき、主人公が変身する話をいつも考えているのですが、今回もそういう方向で作らせてもらいました。いや、“今回も”というよりも、今回が一番わかりやすく変身したかもしれません。“京都”になりたいという、むちゃくちゃな発想でまどかが動き出すのですが、観客はコミックエッセイを作るまどかを最初は応援してくれる。でも後半は「まどかって大丈夫…?」とだんだん心配になっていく。そうやって「この主人公はこれでいいのかな…?」と、まどかを相対的に見るようになり、観客の気持ちがまどかからどんどん離れていくような感じにしたかった。


アサダ:主人公が振り回される映画はありますが、その振り回されていた主人公が、気づいたら周りを振り回していたというのはあんまり無いかなと(笑)。色々つらい思いをした結果、最終的にはそれが突き抜けてしまい、最後は主人公が違うステージに上がっていく話になればと思っていました。


ラース・フォン・トリアーの『奇跡の海』(96)という映画では、寝たきりになった夫が妻に「他の男と寝て、そのことを自分に聞かせてくれ」とお願いします。奥さんは信仰の厚い人なので最初は拒否しますが、夫のたっての願いということで仕方なしに行為を始めていく。もちろん妻はつらい思いをしていて、周囲から村八分にあったりもしますが、それが映画の後半になると、その行為が自分の使命なのだと目覚め、ひたすら突き進んでいくようになる。


この映画でも、まどかは周りが何を言おうが途中からどうでもよくなってきて、自分の思いだけで突き進むようになる。そこに何か成果を求めているわけでもなく、もはや自分の行動の制御が出来なくなってしまう。そういうキャラクターを見たかったんです。



『ぶぶ漬けどうどす』©2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会


Q:不動産業を営む上田(豊原功補)をまどかが攻撃し出すあたりから、だんだん怖くなってきました(笑)。


冨永:豊原さんから撮影中に確認があったんです。「これ、僕が演じる上田は悪くないよね?」と。「はい。悪くないです」とお答えすると、豊原さんは「そうだよね。あんまりいやらしい悪者みたいな感じにしない方がいいよねぇ」と。確かに上田は全然悪くないですからね(笑)。


まどかからは、上田は悪い“ヨソさん”に見えるけれど、上田はあくまで仕事をしているだけ。上田はカッとなったときに江戸っ子の地が出てしまうというちょっと複雑な京都人ですが、基本、悪いことはしていない。そう伝えると豊原さんは安心していました(笑)。芝居をする上で2度ほど確認がありましたから。やっぱり気になったのでしょうね。


Q:コミックエッセイで攻撃していくという手法が面白かったです。


アサダ:最初はまどか単体でエッセイを書く設定だったのですが、スクリーンで文字を読ませるよりは漫画で見せた方が分かりやすい。冨永さんからコミックエッセイというアイデアを出していただき「確かに!」となりました。それで漫画を描くための相棒として、安西莉子というキャラターを登場させました。


冨永:コミックエッセイを描いている友達がいて、自分をネタにして作品をつくれるのをずっと羨ましく思っていました。安西をやってもらった小野寺ずるさんとは今回2度目のお仕事ですが、小野寺さん自身なんとコミックエッセイを描いているという(笑)。まさに適任でしたね。





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