京都なのになぜ琵琶湖?
Q:京都が舞台となりつつも、大学教授の中村(若葉竜也)とまどかが会うシーンでは、度々琵琶湖が出てきます。
冨永:最初あのシーンは脚本に「山寺」と書いてあったんです。それでアサダさんに「山寺ってどこの寺ですか?」と聞いたら、「特に決めていなくて、旅行者が知らない場所で、いかにも京都人が密会しそうな祠みたいなところ」と言うんです。それで僕は、スタッフとのロケハンが始まる前に一人で色々と探しに行ってみました。何ヶ所か廻ったのですが、なかなかいいところがなく…。するとなぜか山寺から琵琶湖へとガラッと変わってしまった(笑)。あの変更って、アサダさんが言い出したんでしたっけ?
アサダ:二人が会うシーンは、パク・チャヌクの『別れる決心』(22)に出てくる、刑事と容疑者が密会するシーンのイメージでした。若葉さんが演じた中村先生はかなりエキセントリックなキャラクターになっていますが、当初は、まどかをよろめかせるような、いわゆる韓国映画に出てくるわかりやすい2枚目スターみたいなイメージで書いていました。すると冨永さんから「それだと、まどかが京都じゃなくて中村先生によろめいちゃう」と(笑)。
『ぶぶ漬けどうどす』©2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会
冨永:中村先生ありきの行動になるといけないと思ったんですね。
アサダ:「なるほど」と思い、キャラクターの恋愛要素は外しました。そうなると、エキセントリックな中村が、さも意味があるようなことを言うのにふさわしい場所はどこだ⁉︎となり、これは琵琶湖かな…と。
冨永:中村のセリフは最初「何も足さない。何も引かない。」だったのですが、それだとウイスキーのCMと同じになっちゃう。それで「何も変えない。何も変わらない。」に変わりましたね(笑)。
アサダ:「この石がヨソさんだとして、この湖が京都だとすると…」というセリフもあるのですが、そもそも琵琶湖が京都だと言っている時点でどうなんだって感じですが(笑)。