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『港のひかり』藤井道人監督 伝統に飛び込んで得た進化【Director’s Interview Vol.528】

『港のひかり』藤井道人監督 伝統に飛び込んで得た進化【Director’s Interview Vol.528】

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盟友・横浜流星を主演に迎えた映画『正体』(24)で日本アカデミー賞最優秀監督賞・最優秀主演男優賞・最優秀助演女優賞の3冠を成し遂げた藤井道人。日本映画界の頂点ともいえる立場になってもなお、彼の挑戦は止まらない。『ヤクザと家族 The Family』(21)の舘ひろしと再び組み、生ける伝説である名キャメラマン・木村大作と共に作り上げた新作映画『 港のひかり』は過去の藤井監督の作品群とは一線を画す、特異点的なヒューマンドラマとなった。



『港のひかり』あらすじ

漁師として暮らす元ヤクザの三浦(舘ひろし)は、ある日事故で視力を失った少年・幸太(尾上眞秀)を見かける。幸太は両親を交通事故で亡くし、引き取った叔母らに虐待されていた。どこにも居場所がなかった者同士、いつしか年の差を超えた特別な友情を築いていくが、幸太の目を治すための手術の費用を残して、突如三浦は姿を消してしまう。時は流れ、12年後。無事に目が見えるようになった幸太は、警察官として活躍する傍ら、恩人である三浦を探していくうちにある秘密を知る。


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このままじゃダメだと思いながら30代を過ごしてきた



Q:改めて、本企画の立ち上がりについて教えて下さい。


藤井:元々は舘ひろしさんが『ヤクザと家族 The Family』以降に「藤井くんともう1本、主演映画を撮りたい」と言ってくれたのがスタートでした。ですがその後、企画開発に難航して数年が経過してしまったんです。自分がやりたいものと舘さんがやりたいもの、配給会社が求めるものがなかなか合致しなかった。そんななかで、生前の河村光庸プロデューサー(スターサンズ)に相談したときに「いい企画があるよ」と口頭でバーッと喋ってくれたのが『港のひかり』の原案でした。それがとても面白く、じゃあプロット(作品の概略資料)にしてみようというところからスタートしました。


Q:どのあたりに面白みを感じられたのでしょう。


藤井:舘さんが自己犠牲という十字架を背負った元ヤクザの漁師という部分です。僕自身、そんな舘さんの姿を見たことがありませんでしたから。『あぶない刑事』だったり、カッコいいけれどひょうきんな役も多い舘さんが孤独で物静かな男性を演じる機会はなかなかないのではないかと思い、ご本人に相談したら「ぜひ」と言っていただけて具体的に動き出しました。



『港のひかり』©2025「港のひかり」製作委員会


Q:撮影の木村大作さんとの出会いは、『最後まで行く』(23)「イクサガミ」(25 Netflix)でご一緒されてきた岡田准一さんの仲介によるものだそうですね。


藤井:そうですね。自分の映画づくりに飽きたわけではないですが、このままじゃダメだなと感じながら30代を過ごしてきました。安定したものだったり、求められるものがあるなかでホームランを打つということを一生懸命やってきたつもりでしたが、自分は本当の意味で映画のことをまだ知らないんじゃないか?という想いが消えず、壊すというか変えるというか、自分の身体を使って実験できる環境を探していたんです。岡田さんに相談したら木村大作さんの名前が挙がり、“それは面白いかも”と単純に思い、どうせ断られるだろうとチャイムを鳴らそうとしたらご本人がもう玄関の前にいて逃げられなくなったという(笑)。家の中にいると思ったら「お前が藤井か」と待ち構えていた感じでした。





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