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『港のひかり』藤井道人監督 伝統に飛び込んで得た進化【Director’s Interview Vol.528】

『港のひかり』藤井道人監督 伝統に飛び込んで得た進化【Director’s Interview Vol.528】

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ワンシーンに懸ける集中力を、自分のやり方でどう引き出すか



Q:作品をご覧になった方々の反応も今までと違いますか?


藤井:全く違います。『港のひかり』は「イクサガミ」と同時期に公開になりますが、「イクサガミ」が明治時代を令和のトーンで撮っているのに対し、『 港のひかり』は令和を昭和のトーンで撮っています。あまりにコントラストが強烈で、自分でも面白いです(笑)。


いままでは自分の作品を好いてくれる方は比較的若い方が多いイメージでしたが、本作に関しては大作さんと同じ時代を生きてきたであろう方々に感想をいただくことが多いです。その年代をターゲットにしたというと語弊があるかもしれませんが、作品を作る前に亡くなった河村さんをある種憑依させて大先輩方と作れたような気はしています。


僕のチームは平均30代くらいなのですが、大作さんが連れてきたスタッフは60~80代でした。誰しもができる経験ではないと思います。



『港のひかり』©2025「港のひかり」製作委員会


Q:改めて、『港のひかり』で得た経験が以降の作品づくりにどう還元されたのでしょう。


藤井:冒頭にお話しした一個の画を撮る集中力を、同じやり方ではなく、ゴールとしてどう辿り着くかの道筋を相当考えました。怒鳴るでも怒るでもなく、「みんな来て! こっち面白いよ!」と気持ちを誘導する演出力――ここでいう“演出力”は、画に対するものというよりチーム力の強度を上げる方法論です。『港のひかり』、そして「イクサガミ」を経た今は、きっと数年前よりレベルアップできているはずです。


Q:となると、ご自身の中で現状打破は達成できた感覚でしょうか。


藤井:現状打破だけでなく、自分を使った実験も予想以上に行えました。実験ですから、極論成功でも失敗でもどちらでも糧になるんです。そのうえで、自分に課した命題として「舘ひろしさんを魅力的に撮る」があった形でした。やっぱり、自分に飽きないことって難しいんです。飽きないためにはチャレンジが必要になりますが、盛大な実験ができました。





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