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『Love Letter』岩井俊二監督×『東京日和』竹中直人監督 90年代、日本映画、そして中山美穂【Director’s Interview Vol.530】

『Love Letter』岩井俊二監督×『東京日和』竹中直人監督 90年代、日本映画、そして中山美穂【Director’s Interview Vol.530】

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Love Letter』(95)と『東京日和』(97)、中山美穂の代表作とも言える二つの映画がデジタルリマスターで蘇る。それぞれの作品を手がけたのは、ともに90年代に映画監督としてデビューした、岩井俊二と竹中直人。90年代、中山美穂という女優をフィルムに収めた2人の監督対談。中山美穂とはどんな女優だったのか、そして90年代の日本映画とは、同時代を駆け抜けてきた2人にたっぷり話を伺った。



『Love Letter』あらすじ

神戸に住む渡辺博子(中山美穂)が、山の遭難事故でフィアンセの藤井樹を亡くして2年が経った。三回忌の帰り道、樹の家を訪れた博子は、樹の中学時代の卒業アルバムから彼がかつて住んでいた小樽の住所を見つけ出した。博子は忘れられない彼への思いをいやすために、彼が昔住んでいた小樽=天国へ一通の手紙を出した…。ところが、あろうはずのない返事が返ってきた。やがて、博子はフィアンセと同姓同名で中学時代の同級生、ただし女性の藤井樹が小樽にいることを知る。博子の恋、樹の恋、一通のラヴレターが埋もれていた二つの恋を浮き彫りにしていく。



『東京日和』あらすじ

今は亡き妻・ヨーコ(中山美穂)に捧げる写真集の出版の準備をしている写真家の島津巳喜男は、在りし日のヨーコのことを想い出していた。だが、甦ってくるのはふたりにとって最悪だった日々のことばかり。当たり前の夫婦生活ができないふたりは、何気ないことでお互い気づまりな思いをすることが多かった。そんなヨーコが巻き起こした事件のひとつひとつが、今の巳喜男にとって忘れることのできない思い出であり、彼は自分の写真人生がヨーコとの出会いから始まったことをしみじみと感じるのだった。


Index


中山美穂のための映画



Q:『Love Letter』と『東京日和』、それぞれどのタイミングでご覧になっていましたか。


竹中:『Love Letter』は公開当時に映画館で観ました。


岩井:僕は今回お会いする前に『東京日和』を拝見しました。公開当時は観る機会がなかったものですから。


Q:作品の印象はどうでしたか。


竹中:岩井さんの映像作品は当時、僕たちにとっては特別な存在でした。今までの日本映画とは圧倒的に違う、岩井俊二監督ならではの世界というか、それに痺れちゃいましたね。すげぇ映画を観たなって。そして勝手ながら、これは中山美穂のための映画だと思いました。豊川悦司さんが意外に地味な存在だったのも良かったです。そのおかげで美穂ちゃんと酒井美紀ちゃんの存在がより前面に伝わってきました。ロケーションの素晴らしさや篠田昇さんの撮影も見事で、ぐいぐい世界に引き込まれていきました。いやはや、こんなふうに監督を前にして分析するのは恥ずかしいです(笑)。本当に素晴らしい映画でした。


岩井:『東京日和』はもう素晴らしくて。まさに美穂ちゃんにぴったりな役でした。普段の彼女もあんな雰囲気なんですよ。映画の中のように突飛なことはしませんが、雰囲気や距離感は本当にああいう感じ。この役は唯一無二でしたね。



『Love Letter 4Kリマスター』©フジテレビジョン


Q:それぞれどういった経緯で中山美穂さんが主演することになったのでしょうか。


竹中:僕は『Love Letter』での美穂さんの存在がずっと心に残っていました。『東京日和』を撮ったのはその2年後です。代々木上原を散歩していた時に、たまたま立ち寄った本屋さんに向日葵の装丁の「東京日和」が置いてありました。手にとってみると、荒木経惟さんと妻の陽子さんのフォトエッセイだった。ページをめくっていくうちに「これは絶対映画にしたい!」と思ったんです。そのときに直感的に美穂ちゃんの顔が浮かんできました。陽子役は中山美穂しかいないと。美穂ちゃんとは、遠い昔、ぼくがお笑いでデビューしたての頃に「毎度おさわがせします2」と「セーラー服反逆同盟」というドラマでご一緒していました。ぼくは両作品とも変なオヤジの役です(笑)。美穂ちゃんもぼくの事を「この人変な人だなぁ…」って思ってたんじゃないかな(笑)。それに当時のぼくは中山美穂を女優として見ていなかった…。


それがまさか、自分の監督映画に主演してもらうなんてその頃は思ってもいなかったです。『Love Letter』の美穂ちゃんを見てからぼくにとっての彼女の印象が大きく変わって、自分のこころの中に美穂ちゃんの表情が浮かんで来たんでしょうね。『Love Letter』は本当に中山美穂の魅力を最大限に魅せてくれた映画でした。


岩井:『Love Letter』のときは、プロデューサーの河井真也さんが以前一緒にお仕事をされていたようで、「美穂ちゃんどうだろう?」と言ってきたのが最初でした。彼女が演じるおきゃんな役はよく見ていたのですが、この映画の渡辺博子のような静かな役をやっている印象がなかったので、実際はどういう子なんだろうと。では一度お会いしましょうとなり、仕事場のフジテレビまで訪ねて行ったんです。そこで初めてお会いしたのですが、第一印象が逆だったんですよね。実際に会ってみたら静かな雰囲気の方で。思っていた人と全然違っていた。それで「渡辺博子も藤井樹も両方大丈夫だな」と思ったのですが、ご本人から「私、映画はあんまり得意じゃなくて…」みたいな感じで言われてしまった。「これは断られたな…」とちょっと微妙な空気になってしまって(笑)。それで一旦帰ったのですが、その後正式に「やります」という流れになり、ホッとした感じでした。


竹中:ドラマの現場で、お芝居しているときはおきゃんな感じでも、カットがかかった後や、廊下ですれ違う時は全然別の印象を受けました。僕の中にもその佇まいがひそかに残っていたのかもしれませんね…。




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