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『遠い人』玉田真也監督 1テイク目の演技が良い理由【Director’s Interview Vol.531】

『遠い人』玉田真也監督 1テイク目の演技が良い理由【Director’s Interview Vol.531】

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メインの物語に影響を与えるサブの物語



Q:脚本はどのくらいの期間で書かれたのでしょうか?


玉田:プロットまでが2週間くらいですね。そこから実際に脚本の作業をして、初稿を書きあげるまでに1週間から10日くらい。その後細かく改稿はしますが、大体1ヶ月以内だと思います。


Q:書き方としては、二人の女性が旅をするというプロットに対して、シーンをつなぐ細かい設定や出来事を脚本の段階で詰めていく感じなのでしょうか。


玉田:基本的にはそうですね。これはたまにあるのですが、今回はプロットにあった大きな軸を脚本にする段階で結構変更しました。メインの軸に対して、並行して走るサブの軸を追加したんです。最初は坂井真紀さんと李夢苡樺さんの二人しか出てこないプロットで、他に出てくるのは二人が行く先々で会うお店の店員さんくらい。そこから、宿の店主とその娘を大きく出すことにして、その二人の物語も並行して走らせることにしました。店主と娘のサブの物語からメインの物語が影響を受けて、物語の最後に向かっていく。そんな大きな変更をやりました。


二人だけの話だと、面白くなりきらないのではないか。外側の人から話しかけられたり、どこかに連れていかれたりすることで、メインの物語に影響が出てくる。そんな風に作った方が、僕の台本作りでは捗ることが多いんです。クライマックス付近では、みんなで歌を歌うシーンをやりたくなったので、そこに向かっていくように他の人たちも入れようと。そういう理由もありました。



NORMEL TIMES ショートフィルム『遠い人』


Q:店主と娘は、父親役が岩谷健司さん、娘役が祷キララさんがそれぞれ演じていますが、この二人の存在が及ぼす影響や細かい設定などは、脚本を重ねながら詰めていかれるのでしょうか。


玉田:それはプロットの時点で考えます。今回のプロットでは店主と娘の二人は出て来ていなかったので、初稿のときに考えましたが、僕の場合は大体プロットで作り込んじゃうんです。プロットでほぼ骨組みは出来ているので、あとはそこにセリフを入れていけばシナリオになる。それくらいの感覚でプロットは作っていますね。


Q:一般的に映画の脚本では箱書き*を作ったりするようですが、玉田さんはどういった書き方をされるのでしょうか。


*箱書き:物語をシーンごとに分け、シーンの要点や詳細を(箱に)まとめること。


玉田:箱書きってしたことないですね。確かにシナリオの本とかを読むと書いてありますよね。でも僕は演劇から入ったので、戯曲と言われる形式で脚本を書き始めたんです。演劇の台本ってほとんどト書きが無くて、ほぼセリフの応酬で全てが構成されています。また、映画に比べると演劇はシーン数も少なくて、極端な場合ワンシーンで90分〜2時間なんてこともある。映像から始めた脚本家の方は、箱書きを作るところを通るのかもしれませんが、僕はそこには行かずに、プロットの時点でセリフを結構書き込んじゃう。僕の場合、初稿と一般的なプロットの間ぐらいのものがプロットになっていて、シーンだけではなくセリフの応酬も書き込んである。このシーンはこのセリフで終わる感じだろうから、次のシーンにはこうやって繋がるなと。セリフのリズムで次のシーンにポンと行っちゃったりする。だから脚本を作っているような感覚でプロットの時点から組み込んでいきます。思いつくところは全部書いてあるんです。


セリフを書いて初めてキャラクターがわかってくる感じもあって、セリフをこねくり回して書いていたら、この人物はこういうキャラクターかもと、そこで初めてわかってくる感じもあります。




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