課題はカットのタイミングが早すぎること
Q:細かい話ですが、編集の際にカットの終わり尺をあえて伸ばして使っている箇所がある気がしました。意識されているものはありますか。
玉田:これも毎回課題で「あ、またやってしまった..」と思うことが多いのですが、僕はカットをかけるのが早いらしいんです。「カット!」とかけると俳優は芝居を止めますが、編集で見ていると、「この芝居、まだ続きを見ていられたのに」と編集マンからよく言われるんです。脚本上のセリフは終わっていたとしても、俳優はカットがかかるまでは芝居をし続けますから。「この顔、もうちょっと見たかったな。でも俺カットかけちゃってる...」みたいな(笑)。それもあって「カット!」と言う0.1秒前ぐらいまで使っているときがあります。

NORMEL TIMES ショートフィルム『遠い人』
Q:短編の監督は今回が初めてだったということですが、作ってみていかがでしたか?
玉田:大きな感覚は違いませんが、撮影が3日だったのであっという間に終わった感じがしました。また、ある程度投げっぱなしでも物語が成立していく感覚があった。つまり、物語がちゃんと終わりきらなくても良いし、途中から始まっても良い。長編のある一部分を切り取るような感じでいけるのかなと。一部分を切り取るというと、なにか長編を考えた上でそこを切り取る感じがしますが、そうではなく、物語の前と後ろがぼんやりとあるだけ。すごく抽象的ですが、その“ぼんやり”から急に一つのセリフが始まっていく感じでもいけるんだなと。あとは、やってみたいことを気軽に試せる場でしたね。長編だとなかなか時間も掛かるし、力も入りすぎる。先述の俳優の話のように、いい具合に力を抜いて出来るような、それぐらいの短さだなと。
Q:これからご覧になる方へメッセージをお願いします。
玉田:短いのであっという間に観られると思います。家で観るのに適した、ゆったりとした映画です。観た後に、何となく旅行に行きたくなってもらえたらいいなと。それくらいのゆるい空気でできた映画です。ぜひご覧ください。
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監督/脚本:玉田真也
1986年、石川県出身。玉田企画主宰・作・演出。自身の劇団「玉田企画」のすべての作品で作・演出を担当。2019年に今泉力哉監督と共作した舞台「街の下で」を発表。2020年にテレビドラマ『JOKER×FACE』(フジテレビ)の脚本で、第8回市川森一脚本賞受賞。最新公演は、2025年に下北沢・小劇場B1にて上演された『地図にない』。監督を務めたその他の映画作品に、第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ部門」に出品された『あの日々の話』(2019)、又吉直樹の原作を映画化した『僕の好きな女の子』(2020)、三浦透子を主演に迎えた『そばかす』(2022)、オダギリジョーがプロデュースと主演を務めた『夏の砂の上』(2025)などがある。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
NORMEL TIMES ショートフィルム『遠い人』
Webメディア「NORMEL TIMES」にて公開中