1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『恋愛裁判』深田晃司監督 業界の当事者に届けるために考えた【Director’s Interview Vol.535】
『恋愛裁判』深田晃司監督 業界の当事者に届けるために考えた【Director’s Interview Vol.535】

『恋愛裁判』深田晃司監督 業界の当事者に届けるために考えた【Director’s Interview Vol.535】

PAGES


欧米から見た日本のアイドル文化



Q:プレス向け資料では、この映画を「誰に見せるんだろう、どういう人が見るんだろう」ということを考えたという発言もされていました。われわれのイメージだと、深田監督は自分の観たいものを撮って、わかる人やついて来てくれる人はきっといるはずだというアプローチだったと思うんです。


深田:それはそうですね。今も基本的には同じなんですけど、この作品は結構イレギュラーですね。普段は自分が一番最初の観客であるというつもりで、自分が面白いと思うものをほかの人も面白がってくれるはずだと信じるしかなくて、ドキドキしながら作ってるんですけど、今回の作品は届けたい相手は誰かっていう、いつもは考えないことを珍しく真剣に考えました。そうするとやっぱり、アイドル業界に関わっている人たちに観てほしいという気持ちに行きつきました。逆に、ヨーロッパの人たちがどう見るかなんてことは気にし始めたらキリがないから気にしてないんですけど、今回の作品は日本固有のアイドル文化がモチーフなので、ヨーロッパの人たちをどう意識するのか、しないのかは考えないといけませんでした。



『恋愛裁判』©2025「恋愛裁判」製作委員会


今回、海外でも上映してますます確信が増した感じなんですが、やっぱり欧米の人にとってアイドル業界って基本的に愛着がないし、遠い国の問題なんですよね。特に日本のアイドル文化について彼らが知っていることは、芸能としての側面よりも、ジャニーズ問題に代表される社会問題の側面なので、一番期待するのは社会問題としてぶった斬ることなんです。つまりアイドル業界を社会悪として描くっていうことなんですけど、でも日本に住んでいれば、アイドル業界とかアイドルのカルチャーとかはもう何十年も日常に根付いていて、映画にしても音楽にしても、CMにしてもテレビドラマにしても、アイドルを目にしない日なんてないぐらいで。自分みたいにアイドルに関心がないと思って生きてきた人間でさえ、思い出してみればずっとアイドルカルチャーと共存してきたんだなという実感があったんです。


そういった中で、アイドルを社会悪として単純化してぶった斬れば、そもそもアイドル業界に愛着も関心もない外部の人は溜飲が下がるんでしょうけど、でもそれでいいのかっていう疑問がありました。


Q:欧米ではむしろそういうエキゾチックな社会派みたいなものが求められる?


深田:それはあります。国際映画祭に行くとこの問題が常につきまとうと思っていて、ある種のインディペンデント系というか、作家性の強い映画の価値ってヨーロッパの三大映画祭を中心にした国際映画祭やジャーナリズムによって格付けされてしまう。そこでピックアップされなければ国際的な名声や知名度を得られないところがあるんですね。でも一方で、そういったヨーロッパの映画人や映画祭が好む傾向というのは確実にあって、例えば彼らが見るアジアや中東とかへのオリエンタリズムとか、ある種の社会的な野蛮さみたいなものを悪として差し出して、ある種の西洋的な価値観でぶった斬るみたいなものが残念ながら好まれやすいというのはあると思います。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『恋愛裁判』深田晃司監督 業界の当事者に届けるために考えた【Director’s Interview Vol.535】