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『恋愛裁判』深田晃司監督 業界の当事者に届けるために考えた【Director’s Interview Vol.535】

『恋愛裁判』深田晃司監督 業界の当事者に届けるために考えた【Director’s Interview Vol.535】

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意識した『浮草』と『緑の光線』



※これ以降、物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


Q:何かに気づくと言えば、真衣が恋人になった大道芸人の敬(倉悠貴)に「何かやってよ」っていうシーンが2度ありますよね。


深田:はいはいはい(笑)。


Q:2度目のときは、本当に恋の魔法がみるみる色あせていくという恐ろしいシーンになってましたよね。


深田:真衣も「あれ?」って、「こんなもんだっけ?」って思う。ああいうのはやっぱり好きですね。でもそういった意地悪さを期待されると、今回はちょっと足りないと言われそうだけど。



『恋愛裁判』©2025「恋愛裁判」製作委員会


Q:あとラストシーンで多くの人が感じると思うんですが、深田監督がお好きなエリック・ロメール監督の『緑の光線』(86)を想起しました。道筋にゴールがあるわけじゃなく、いろいろ体験した後に何か感慨だけがあって終わる、それが太陽に託されているっていうのは「マジで『緑の光線』をやってる!」と思ったんですが、意識はしていましたか?


深田:オマージュとしての確信度で言えば、小津安二郎の『浮草』(59)の方があからさまに真似をするぞという覚悟でした。土砂降りの中で罵り合う場面は、「このシーンをやりたいんです」って言ってスタッフに見てもらったくらいです。あれはもうどれだけマネだと言われても異存はないですね(笑)。


ラストシーンに関しては、脚本を書いているうちに自然と、真衣が最後に太陽を見るという流れになったんです。ロメールの『緑の光線』はマイ・フェイバリットというか一番好きな映画なので当然意識しなくてもしてしまうんですけど、でもいま仰ったような、いろんなことがあって感慨だけが残るっていう感覚は、自分が好きな映画にすごく多いんです。エリック・ロメールしかり、成瀬巳喜男もそうだし小津安二郎もしかりで、やっぱり好みなんだと思うんですね。だからそこに近づけていたなら嬉しいって感じですね。あれだけ偉大な映画とはとても比較できませんが……。


あと『緑の光線』は夕日でこっちは朝日なのでそこは違うってことで(笑)。ただ、ちょっと変わった自然現象を見せたいという気持ちは脚本を書いていたときからあったと思います。それで太陽で何かないかと探したら「だるま朝日」ってのが見つかって「コレだ!」って思いました。


Q:印象に残ったのは、だるま朝日がはっきりと見える直前で「もう帰ろうか」と真衣たちはいなくなってしまう。いろんな解釈ができると思うんですが、真衣たちが去るタイミングはどうやって決めたんでしょうか?


深田:あ、そうでしたっけ? いま言われてみて、そうだなって思いました(笑)。これも言葉で説明してしまうと恥ずかしいのですが、自分の中では、最後に二つに重なっていた太陽が離れ離れになる姿を映すことで、真衣も何かから自由になれたという意味合いを密かに込めたつもりです。けど、確かに真衣たち早めに帰っていきましたね(笑)。多分、そういった寓意を登場人物がはっきりと見ているのは野暮だなって思ってしまったんだと思います。



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監督:深田晃司

2010年『歓待』が東京国際映画祭「日本映画・ある視点」作品賞、11年プチョン国際ファンタスティック映画祭最優秀アジア映画賞受賞。13年『ほとりの朔子』が、ナント三大陸映画祭グランプリ&「若い審査員賞」をW受賞。16年『淵に立つ』がカンヌ映画祭「ある視点」部門審査員賞、17年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。18年仏芸術文化勲章「シュバリエ」受勲。その他の監督作に、『さようなら』(15)、『よこがお』(19)、『本気のしるし〈TVドラマ再編集劇場版〉』(20)、『LOVE LIFE』(22)、制作中の新作に『ナギダイアリー(仮)』などがある。



取材・文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。




『恋愛裁判』

 2026年1月23日(金)全国劇場にてロードショー

©2025「恋愛裁判」製作委員会

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