『キル・ビル』への影響
Q:佐藤さんは当時から役者としても活動されていたのでしょうか。
佐藤:脚本デビューと役者デビューがほぼ同時期でした。『金髪の草原』で脚本デビューした際に、ザズウという事務所の社長とボウリング大会でたまたま知り合ったんです。そこで今後の目標を聞かれて、「いずれ監督や、監督・主演もやってみたい」とカマしていたら、「出る方にも興味があるなら、うちでマネージメントしましょうか」と。『殺し屋1』の時点での出演はまだ5~6作目くらいでしたね。
Q:演技のレッスンなどは受けられたのでしょうか。滑舌も全く問題ないですよね。
佐藤:何も受けていません。元々サラリーマンでしたからね。こういう極端な役は良いのですが、普通の役の方が逆に難しいですね。
Q:出演者に映画監督(演出家)が多いですが、(塚本晋也・SABU・松尾スズキ・佐藤佐吉)、何か理由はあったのでしょうか。
佐藤:塚本さんの出演が決まった時点で、「これはもう、監督たちに集まってもらった方が良いのでは?」という雰囲気がありました。特にSABUさんの役(金子)に関しては、宮崎さんがやたらと注文をつけていましたね。映画の中でも少しパッとせず、みんなから除け者にされているようなキャラクターの金子に、宮崎さん自身の生き様を投影させていたんです。

『殺し屋1 4K』©山本英夫/小学館「殺し屋1」製作委員会2001
Q:金子は元警官で射撃のオリンピック候補だったという設定ですが、『駅 STATION』(81)の高倉健さんの役から持ってきたのかと思いました。
佐藤:言われてみれば確かにそうですね。原作の金子は単なるチンピラなんです。でも宮崎さんと話しているうちに「金子はいざという時に本当にヤバいやつだ」というイメージが出てきた。そういった設定変更は、今回結構やっているんです。双子の二郎と三郎も、映画の中だと刑事という設定になっていますが、原作ではとんでもないヤクザの双子ですから。また、破門されたヤクザの中には原作だともう一人「昇」というキャラクターがいるのですが、「3人もいらないな」と思って2人に減らし、その2人に昇のキャラクター要素を振り分けたりもしました。
Q:本作がクエンティン・タランティーノの『キル・ビル』(03)に繋がった部分も大きかったそうですが、タランティーノと本作について話したことはありましたか。
佐藤:タランティーノが日本でキャスティングをする際、ウチの事務所の社長が手伝いをしていたんです。参考作品を色々見せた中で、彼が一番気に入ったのが『殺し屋1』でした。それで、役者陣は『殺し屋1』からそのままスライドする形で『キル・ビル』に出演しています。國村隼さんと菅田俊さんなんて、本当にもう『殺し屋1』のまんまで『キル・ビル』に出てますし、風祭ゆきさんも出てますから。私も出ているのですが、社長が「『殺し屋1』の脚本を書いた人も呼びましょうか」と呼んでくれて、実際に会ってみたら映画の話とは関係なく、「君はチャーリー・ブラウンに似ているな。出てみないか」という流れで出演が決まりました(笑)。
参考作品の中には阪本順治監督の『新・仁義なき戦い。』(00)もあったので、それであの音楽(新・仁義なき戦いのテーマ)の使用を思いついたみたいです。私たちが出演するシーンを撮っている時に、タランティーノが「ここはカッコイイ音楽が流れるぞ!」と言うので、「何の音楽ですか」と聞くと「それは内緒だ」と言う。今考えると、「新・仁義なき戦いのテーマ」をそのまま使うとはさすがに言えなかったのかもしれませんね。