撮影監督・近藤龍人が立つ位置
Q:大悟さんが警察に捕まるシーンで、通過する電車の車輪越しのショットがまるでゾートロープのようでした。あのアイデアはどのように思い付かれたのでしょうか。また、撮影の近藤龍人さんとはどのように話されたのでしょうか。
是枝:あの場所を見つけたときに、電車越しにしようと僕からアイデアを出してコンテを書きました。でもあのポジションを見つけたのは近藤さんです。
Q:では場所が決まってから撮影方法を考えたと。
是枝:基本は場所が決まってからのアイデアがほとんどです。脚本の時点で踏切のシーンは書いていましたが、撮り方自体はあの場所が決まってから。ロケハンの際に、どっちの線路で、どの距離だったら、どのくらいの隙間で見えるか。車両と車両の間では見えないから、じゃあローポジションで車輪越しか。などなどと考えて、あの位置での撮影になりました。

『箱の中の羊』©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.
Q:その辺は近藤さんが提案してくる感じなのでしょうか。
是枝:近藤さんは色々と提案してくれますが、言葉にしないんです。僕がカット1のポジションでリハを見ていると、近藤さんは違うところに立っている。それで僕が近藤さんのところに行ってみると、「あ、こっちが1でしたね」ということがよくある。それで「そこから撮るんだったら、役者の動かし方を変えてみよう」となっていく。丁々発止とまでは言いませんが、「そう来るならこうしようかな」みたいなことはよくあります。一切言葉にはしないのですが(笑)。
近藤さんとやるのはそこが大変ですが、そこが楽しいところでもある。でも僕が新人監督だったら胃潰瘍になっているでしょうね。「なんでカメラをこっちに置いてくれないんだろう」って(笑)。でも近藤さんがいく場所には明らかに意図がある。それをどう受け止めて、もう一段上の演出を見つけられるかが勝負。今回はそこが楽しかったですね。