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『箱の中の羊』是枝裕和監督 リアリティを超え寓話になる【Director’s Interview Vol.554】

『箱の中の羊』是枝裕和監督 リアリティを超え寓話になる【Director’s Interview Vol.554】

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撮影中に編集する意義



Q:撮った素材をその日のうちにラフ編集をされているとのことですが、それは撮影においてどのような効果があるのでしょうか。


是枝:それを始めたのは不安だったから。『歩いても 歩いても』(08)を撮っているくらいまでは、「カット割」というものがわからなかった。カットを割って編集で組み立てていくと、(撮影したカットが)足りなかったという経験が恐怖として残っていたんです。後で「ここが1カット足りなかったな…」となるのが本当に嫌だったので、夜のうちに編集して、それでカットが足りなかったら翌日の朝一にリテイク名目でもう1カット足すみたいなことを、『歩いても 歩いても』から始めました。


当時はそうやって欠点を補うためにやっていたのですが、今はもう大分慣れてきたのでそれは必要ない。でも編集するのが楽しいんです。いいシーンが撮れたときにその日のうちに編集して、編集画面で再生している映像を携帯で撮って、それを「いいでしょ」ってスタッフに送る。たいてい夜中になるので、多分向こうは迷惑なんですが(笑)。でもそれをやっておくと、翌日のアイデアの出方が違ってくる。「もうこのカットは要らないな」とか、「ここのセリフ変えてみようかな」とか。そうやって脚本を更新させていく意味でも、編集して一つ一つ答えを出していくことに意味がある。そう思ってやっています。


Q:本編集では組み直す感じでしょうか。撮影時の編集をそのまま生かすこともあるのでしょうか。


是枝:その段階での編集がそのまま残ることもあります。踏切のシーンなんかはそうですね。もちろん変わっていくところもあります。それが脚本と編集と演出を有機的に結びつけていくために必要なのだと思います。



『箱の中の羊』©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.


Q:今回はAIもテーマの一つとなり時代性を感じますが、アイデアのストックは常に持たれているのでしょうか。


是枝:今回の直接的なきっかけは、AIを使った死者を蘇らせるビジネスが中国で人気だという記事を読んだことでした。ちょうど2年前の3月くらいに記事が出ていて「あっ!」と閃いた。それで「夫婦の元に死んだ子が戻ってくる」という簡単な話を書き始めました。


「人間ではないものから人間を見ていく」という話は『空気人形』(09)でもやっているし、2000年くらいにもロボットと子供の話のプロットを書いたりもしていました。NHKでは「後の日」(10 NHK BS)という1時間くらいの短編ドラマを撮りましたが、それは原作が室生犀星で、死んだ子供が戻ってくるという怪談めいた話。だから遡ると似たモチーフは何度かやっています。そうやって以前眠っていたものが浮上する感じがありますね。今回みたいに浮上してから製作まで2年というのはかなり短い方で、長いと10年くらいかかる時もあります。




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監督/原案/脚本/編集:是枝裕和

1962年、東京都出身。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。2014年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げる。1995年に『幻の光』で監督デビューし、その後も『誰も知らない』(04)、『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)等、数々の作品を世に送り出す。2018年の『万引き家族』は、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、第91回アカデミー賞®外国語映画賞にノミネート、そのほか多くの映画賞を受賞した。2019年の『真実』は国際共同製作作品として海外の映画人とのセッションを本格化させ、2022年には初の韓国映画となる『ベイビー・ブローカー』で、第75回カンヌ国際映画祭でエキュメニカル審査員賞、さらには主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる最優秀男優賞を受賞した。2023年には、自身初となるNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」が世界配信、さらに『怪物』が第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞(坂元裕二)とクイア・パルム賞をW受賞し大きな話題を呼んだ。その後も2025年1月に向田邦子の傑作ホームドラマをリメイクしたNetflixシリーズ 『阿修羅のごとく』が世界配信された。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:井上佐由紀




『箱の中の羊』

5月29日(金)全国ロードショー

配給:東宝 ギャガ

©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

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