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40年ぶりの復活『風たちの午後』デジタルリマスター公開記念!矢崎仁司監督+金子由里奈監督特別対談【Director’s Interview Vol.21】

40年ぶりの復活『風たちの午後』デジタルリマスター公開記念!矢崎仁司監督+金子由里奈監督特別対談【Director’s Interview Vol.21】

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 世界を席巻した伝説のフィルムが40年の時を経て蘇る―。矢崎仁司監督のデビュー作『風たちの午後』が国内外からの熱い上映オファーとファンの支援を受け、デジタルリマスター版『風たちの午後』として奇跡の修復が実現。公開を記念して、矢崎監督の大ファンだという『21世紀の女の子』で監督デビューを果たした金子由里奈監督と、矢崎監督本人との特別対談を実施。10,000字にわたる二人の熱い映画談義をお楽しみください!


Index


世界中を敵にしてでも映画を撮ろう



金子:以前、私が所属する大学のサークル(映画部)主催で矢崎さんをお招きし『花を摘む少女 虫を殺す少女(以下、花虫)』(00)の上映会をやったんです。映画も監督のトークショーもとっても面白かったし、最後にみんなでスクリーンを背景に記念撮影をしたんです。あの日はそこまで含めて映画体験でした。ずっと思い出にしています。


矢崎:うれしかったですよ、本当に。今時『花虫』を見たい大学生がいるというのが驚きでしたし、行ったらみんな熱くて。打ち上げも楽しかったしね。


金子:本当に楽しかったです。その後矢崎さんが、映画部に色紙をくださって、そこに「世界中を敵にしてでも映画を撮ろう」って書いてあったんです。映画部って制作した映画の上映会をしても、観客が1〜2人だったりすることもあるんです。でも、部室に飾ってあるその言葉に救われながら、映画を撮ろうって、学生はそうあるべきだって励みにしているんです。

 



矢崎:『無伴奏』(16)のエンディングにDrop’sが『どこかへ』という曲を作ってくれたんですけど、ボーカルの中野ミホさんの詞がいいんですよ。「もし世界中を敵にしてもかまわない・・・」っていう愛の歌なんですけど。それにすごく心を打たれたんで、ああ、パクっちゃおうって(笑)。


金子:『風たちの午後』の矢崎さんのコメントに「人が人を愛することを、愛が動機ならやっちゃいけないことは、何一つないと信じて作った作品」とあるのですが、「世界中を敵にしてでも映画を撮ろう」とニュアンスが似てるなと思いました。


 『風たちの午後』は、映画に出てくる夏子と美津、二人だけのために撮られた感じがします。声量も二人だけにしか聞こえないくらい、すごく小さいですよね。映画を見てても聞き取れない台詞もあり、最初は戸惑ったんです。でも途中から「言葉に意味を見いださなくてもいいんだ」と思いました。ただ、息を潜めて二人の日々を観察し、能動的になる必要はないと思いました。




 映画自体はとても衝撃的でした。道端でベビーカーを押す女性とすれ違うシーンなんて、もう、すごいです。


ーー二人で傘さして立っているシーンですよね。


金子:そうです。一つの傘の下に二人で縮こまるショット。子供を産めない体である美津の母親への視線を今でもはっきり思い出せます。美津の複雑な感情をギュッと二人で共有していたようにも思えました。


他にも気になる点は色々あるんです。例えば、小道具が印象的に使われてるなと。夏子が美津にあげたライターの持ち主が転々とするのも面白かったです。確か映画内では夏子だけライターを持ってないんですよね。


矢崎:そうだね。持ってない。


金子:そう、夏子が美津にあげたライターを夏子は所有できない。それも詩的だなと思いました。ハンカチも印象的ですよね。揺れるハンカチが画面に映るだけで、室内のシーンを観客にも想起させる。勉強になるなと思いながら観ていました。


矢崎:うれしいなあ。そんなふうに観てもらえるの。



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