1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ブルーベルベット
  4. 『ブルーベルベット』で開花した、デヴィッド・リンチの鬼才たりうる才能の片鱗
『ブルーベルベット』で開花した、デヴィッド・リンチの鬼才たりうる才能の片鱗

(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『ブルーベルベット』で開花した、デヴィッド・リンチの鬼才たりうる才能の片鱗

PAGES


切断された片耳と、実在の耳切り事件



 青年ジェフリーが茂みの中で発見した、人間の片耳。耳の穴の中の暗がりというのは、己の心に宿る暗部だったり、得体の知れないダークサイドだったりというのは、前述の通りだが、そもそもなぜ“耳”なのか。『ロスト・ハイウェイ』の基にあるのは、“O・J・シンプソン事件”という、実在の殺人事件が下敷きにあるそうだが、実は本作『ブルーベルベット』も、とある事件によく似ている。


 それはリドリー・スコット監督が『ゲティ家の身代金』(17)として映画化したことで有名な、ジョン・ポール・ゲティ3世(以下、ゲティ3世)の誘拐事件だ。世界一の大富豪にして、稀代の吝嗇家としても知られたジャン・ポール・ゲティ(以下、ゲティ翁)の孫、ゲティ3世が、ローマのファルネーゼ広場で誘拐された。1973年のことだった。誘拐グループが要求したのは、1,700万ドル(当時の価値で約50億円)の身代金。



 ジャン・ポール・ゲティの資産については様々な数字が記録されており、自身もその正確な額というのは把握していなかったそうだが、ゲティ翁にとって、その身代金の支払は容易いものだった。


 しかし、である。ゲティ翁は身代金の支払を、なんと拒否したのだ。その驚くべき振る舞いは、全世界を驚かせ、ここ日本を含む世界中で、そのニュースは大々的に報じられた。苛立ちを覚えた誘拐犯は、ゲティ3世の片耳を切断し、その耳を家族に、郵送で送り付けたのだ。最終的に身代金は支払われ、誘拐されたゲティ3世は、生きて解放された。


 恐らくではあるが、リンチは『ブルーベルベット』の下敷きとして、この事件を用いたのではないだろうか。共通するのは切断された片耳という要素だけではなく、あらゆる点においても、この作品と誘拐事件は酷似している(ちなみに、ゲティ3世の息子で、俳優のバルサザール・ゲティは、リンチの次作『ロスト・ハイウェイ』に出演している)。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ブルーベルベット
  4. 『ブルーベルベット』で開花した、デヴィッド・リンチの鬼才たりうる才能の片鱗