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『ブルーベルベット』で開花した、デヴィッド・リンチの鬼才たりうる才能の片鱗

(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『ブルーベルベット』で開花した、デヴィッド・リンチの鬼才たりうる才能の片鱗

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美術界における、もうひとつの“耳切り事件”とは



 しかし、前項での考察は、すこし早計かもしれない。美術界にも造詣の深いリンチは、また別の、きわめて有名な耳切り事件から、構想を練った可能性がある。美術界における耳切り事件というのは、なにを隠そう“ゴッホの耳切り事件”のことだ。


 フィンセント・ファン・ゴッホといえば、「ひまわり」「夜のカフェテラス」「星月夜」など数々の代表作を残した、かの有名な画家である。ゴッホといえば、ヴィンセント・ミネリ監督の『炎の人ゴッホ』(56)や、全編油絵で描かれた長編アニメーション『ゴッホ 最期の手紙』(17)など、映画のモチーフとなることもしばしばだ。そんなゴッホは、同じ画家仲間のポール・ゴーギャンと、フランスはアルルの街で、およそ2か月間、共同生活をしていた。


 強烈な個性のふたりは、ときには議論を重ね合って、切磋琢磨した。しかし、ある時、お互いの芸術に対する意識が相違し、大きな口論となる。そうして、憤慨したゴーギャンが、アルルの街を去ろうしたその晩、ゴッホは自らの片耳を、あろうことか切断するのだ。



(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.


 なぜ、ゴッホは片耳を切断したのか、その理由は諸説あり、詳しくは判明していない。精神の病であるとか、ゴーギャンに自画像の耳の形が変だと言われたとか、いろいろだ。そんなゴッホの最期は、ピストルでの自殺だった(これも他殺であるなど、諸説ある)。そのすべての真相は、未だ謎に包まれている。『ブルーベルベット』の耳切り事件も同様に、すべて解明はされることなく、多くの謎を残しているのだ。


 デヴィット・リンチの映画というのは往々にして、謎を残している。ゴッホの耳切り事件も、いまとなってはその全貌を解き明かすことは不可能に近いし、『ブルーベルベット』だって、完全に読み解くことはできないはずだ。デヴィッド・リンチは、そうした謎を残すことで、人々の好奇心を刺激しているのだろう。



文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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