社会派娯楽の巨匠シャンカール
手塚治虫が生前のインタビューで、作品に社会問題を取り込む理由を聞かれ、非常にあっけらかんと「ロマンチックでしょ?」と答えていた。
また、下品さにあふれた素晴らしくゲスな傑作シリーズ「トラック野郎」でも、社会の歪みを巧みに作品へ盛り込み「東映の二本立て興行」に足を運ぶ観客たち=会社員や肉体労働者たちの溜飲を下げていたものだ。
『ロボット』と『ロボット2.0』で監督を務めるシャンカールも、同じように社会問題を作品に取り込み、劇的な展開に利用している。過去作『インドの仕置人』(96)や『ボス その男シヴァージ』(07)では、腐敗した政治家や官僚、役人を悪役とし、彼らが懲らしめられる様子は胸のすく爽快感を観客に与えている。
『ロボット2.0』(c)2018 Lyca Productions. All rights reserved.
監督の前作にあたる『マッスル 踊る稲妻』(15)では“美醜”を作品のテーマとし、CM/テレビ業界のルッキズムに鋭く切り込み、しかも全編をCMのリズムとクオリティで映像化していくという、野放図とも思えるコンセプトを、しかも成功させているのである。そんな作劇スタイルは『ロボット2.0』でも取り入れられている。
本作で取り上げられるのは「環境問題」である。なぜスマホなのか? なぜスマホが鳥を模しているのか? そんな謎とメッセージが『ロボット2.0』に込められている。しかも、圧倒的な娯楽性をもって。そして、この作品は近年では珍しく、徹底して「映画館での鑑賞」を前提とした映像設計デザインがなされているのも特徴だ。
『ロボット2.0』(c)2018 Lyca Productions. All rights reserved.
巨大に組み上がるロボットのスケール感ももちろんそうだが、夥しい数のスマホが蠢く様子は、スクリーンで始めて成り立つ表現になっているのだ。
この圧倒的かつ野放図なイマジネーションを!スクリーン映えするスペクタクルを!絶世のインド美女の活躍を!ぜひ劇場で確かめて欲しい。
そして、ぜひとも呆気にとられて欲しい。取られるから。呆気。
文: 侍功夫
本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。
『ロボット2.0』
2019年10月25日(金)公開
配給:アンプラグド・KADOKAWA
(c)2018 Lyca Productions. All rights reserved.
※2019年10月記事掲載時の情報です。