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『マン・オン・ザ・ムーン』ジム・キャリーの名演技は如何にして生まれたのか。製作から18年を経て明かされた驚くべき役作りの深淵

『マン・オン・ザ・ムーン』ジム・キャリーの名演技は如何にして生まれたのか。製作から18年を経て明かされた驚くべき役作りの深淵

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ジム・キャリーはどこにいる?混乱する撮影現場



 『ジム&アンディ』は撮影現場でのジム・キャリーを執拗に撮り続けるが、そこに映し出されるのは「ジム・キャリー」ではない。ジムは撮影以外のバックステージでも徹底してアンディ・カウフマンという人格になりきっており、監督やキャストに対してもカウフマンとして接するため、周りも彼を「アンディ」と呼ばざるを得なくなった。


 カウフマンはあらゆるものをおちょくる芸風のため、撮影所の中でもやりたい放題。ユニバーサル撮影所の中を移動しているときにスピルバーグのオフィスを見つけると「スティーブに挨拶しようぜ!」といきなりアポなしで突撃。困惑するスタッフを尻目に「なんだ、サメの模型はないのか!」とやりたい放題だが、こんなのは序の口だ。


 生前のカウフマンはスタープロレスラーのジェリー・ローラーをおちょくり続けたため、彼とプロレス対決を決行、パイルドライバーをくらい首を負傷している。このエピソードを再現するため、ローラーが本人役で映画に出演することになっていた。するとカウフマンになりきったジムは、撮影所でローラーに出くわすと、本番でもないのに彼やそのガールフレンドをおちょくり喧嘩を売り始めるのだ。あまりのことにローラーも半ギレになり殴りかかるが、監督のフォアマンが仲裁に入って事なきを得た。この時のフォアマンの叫びには思わず噴き出してしまう。「私に映画を撮らせてくれ!」。



 さらにトラブルは続く。プロレスシーンを撮影する際、技をかけられる寸前にカットを割り、スタントマンを使うという案にジムが激怒。撮影中にまたもやローラーを挑発しまくったことで、本当にジムは首を負傷し、現実のニュースネタにまでなってしまったのだ。このような現場の混乱やトラブルの多発などが、メイキング映像を18年もの間、封印させてしまった理由だろう。


 しかし、一方でカウフマンになり切ったジムの行動は、思わぬ現象を引き起こす。撮影現場を訪れた実際のカウフマンの父親や妹がジムに会うと「まるで本人に会っているようだ」と抱き合い、家族としての会話を始めてしまう。


 さらに、ジムは劇中でカウフマンの父を演じる役者とメイク中にひょんなことから「親子喧嘩」をしてしまうのだ。その喧嘩を見ていた女性スタッフは思わず涙ぐんでこう呟く「私の父を思い出したわ」。


 ジムは舞台裏でも徹底してカウフマンを演じることで、カウフマンがまるで甦ったかのような世界を現出させ、スタッフやキャストをその中へと誘いこんだのだ。


 すると『ジム&アンディ』というドキュメンタリー映画を見る行為そのものが、ある奇妙な構造を孕んでいることに気づく。



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