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  4. 『メメント』探偵物・復讐劇の定型を覆すノーランの傑作リバースムービー※注!ネタバレ含みます。
『メメント』探偵物・復讐劇の定型を覆すノーランの傑作リバースムービー※注!ネタバレ含みます。

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探偵物と倒叙ミステリー



 レナードの胸には鏡文字のタトゥーで「JOHN G RAPED AND MURDERED MY WIFE」(ジョン・Gが私の妻をレイプして殺した)と書かれている。夫婦を襲った悲劇的な事件の際、レナードは侵入者の一人に頭を殴られ、記憶障害になる。『メメント』は主人公が失った妻の無念を晴らそうとする復讐劇であり、事件の犯人を探す探偵物の要素もある。


 まず探偵物としての特徴を考察すると、本作は倒叙ミステリーのバリエーションだと言える。典型的な探偵物では、犯人不明の事件が起き、刑事や私立探偵(素人探偵の場合もある)が現場に残った証拠や聞き込みなどの情報をもとに犯人を捜し出す過程が描かれる。犯人(=謎)は終盤で明かされる構成だ。これに対し倒叙形式では、罪を犯す人物を序盤で明示し、捜査する側がどのように犯人に迫っていくかを描写することで、観客や読者の興味を持続させる(ドラマ「刑事コロンボ」が代表例)。




 『メメント』では冒頭でレナードがテディを撃ち、ほどなくテディこそが捜し求めていた復讐相手だとレナードが確信したことが明かされ、そこに至るまでの経緯がさかのぼって描かれる。最初に謎の答えが明示され、その答えに行き着くまでの経緯が後から叙述されるという観点で、これも広義の倒叙形式にカテゴライズできるだろう。


 しかし映画が進むにつれ、素人探偵レナードの10分で記憶をなくすという弱点が、その犯人捜しの信頼性を損なっていることが露わになっていく。彼の記憶障害を都合よく利用しようとする人物も現れる。やがて観客は気づくだろう。レナードによる犯人捜しの過程は、よくある探偵物のように見えて、視点を変えるとそこにまったく別の真実が浮かび上がってくることを。



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