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『博士の異常な愛情』シリアスドラマをブラック・コメディへと変貌させたキューブリックの革新性

(c)1963, renewed 1991 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

『博士の異常な愛情』シリアスドラマをブラック・コメディへと変貌させたキューブリックの革新性

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クライマックスにパイ投げシーンがあった?



 ところで、この映画には当初、全く別のクライマックスが用意されていたという。それは戦略会議室における「パイ投げ」の場面。最初にソ連大使が一つ掴んで投げると、うまい具合に大統領の顔に命中し、それを皮切りに、室内には第三次世界大戦さながらのパイ爆弾が一斉に飛び交い、当たりはクリームまみれの一大カオスへ変貌していくという内容だ。



『博士の異常な愛情』(c)1963, renewed 1991 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.


 実際、この撮影に2週間もかけ、毎日2000個ものパイが準備されたとか。最初のうちは誰もが笑いながら臨んでいたものの、次第にクリームまみれになるうちに不快感は相当なものに膨らんでいったそうだ。ここまでして撮った場面を丸々カットした理由についてキューブリックは「あまりに茶番劇のようになってしまって、映画全体のトーンと合わない」(「映画監督スタンリー・キューブリック」P.208より引用)と感じたことを挙げている。


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