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『ゾンビランド』終末世界で「楽しく生きる」発想の妙――愛すべき“照れ屋”な爽快作

『ゾンビランド』終末世界で「楽しく生きる」発想の妙――愛すべき“照れ屋”な爽快作

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「ルール」を破るとき、作品と観客の心が1つになる



 『ゾンビランド』は、1人の青年の成長物語でもある。自分のことだけを考えて生きていた人間が、他者との出会いで「信頼」を学び、トラウマを克服し、「愛」を勝ち取ってゆく――そんなヒーロー誕生物語が、実は根底で描かれている。


 コロンバスが死守している32のルールは、命を守る「転ばぬ先の杖」でもあるが、同時に他者と自分を隔絶する「壁」のメタファーでもある。ルール通りに行きたいという「自己」に、それでも仲間を助けたいという「犠牲精神」が加わるとき、ヒーローの最大の武器である「自己犠牲」が彼の内に生まれる。


 劇中では、それらがコロンバスの恐怖の象徴=ピエロによって明快に示される。仲間であり、好意を抱いているウィチタが窮地に陥り、目の前にはトラウマであるピエロのゾンビがいる。そこで一歩踏み出す勇気は、無謀でありルール違反だ。しかしここで踵を返して逃げてしまえば、今までの自分からは脱却できない……。




 この展開は『ゾンビランド』の後半に用意されている非常に重要な見せ場であり、ここに至るまでにすべてのシーンが用意されているともいえる。仲間と出会い“愛”を知ることで、コロンバスの理想は「1人であっても生きられればいい」から「みんなで生きたい」へと変わっていった。作品に顕著な「楽しく生きる」の定義自体が、これまでとは決定的に違うのだ。


 コロンバスが「ルール17:英雄になるな」という自分に課した“枷(かせ)”を乗り越えるとき、『ゾンビランド』という作品もまた、大きく飛躍を遂げる。我々観客が抱く心理も、それまでの親愛から、応援へと変わってゆくだろう。冒頭で「ロードムービー」と書いたが、本作は主人公と観客が一緒に旅をするなかで心を通わせていく物語でもあるのだ。


 作品が率直に心を開いてくれるからこそ、観る者も素直に愛情を向けられる。『ゾンビランド』には、そんな幸福なフレンドシップが流れている。




文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライターに。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」等に寄稿。Twitter「syocinema」




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『ゾンビランド』

ブルーレイ発売中 ¥1,800+税

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

(c)2009 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC. All Rights Reserved.

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