『ネメシス』知る人ぞ知るB級SFアクションの名品！「未来感のない未来」と独特のアクションシーンで作り上げた唯一無二の世界観

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2019.11.29稲垣哲也

床を銃で打ち抜き脱出！

　物語の舞台は2027年のロサンゼルス。職務中の銃撃戦で体のほとんどを機械化したサイボーグ捜査官のアレックス（オリヴィエ・グラナー）は、大きな陰謀に巻き込まれ、世界を支配しようとするサイボーグ組織と闘うことになる・・・というのが大筋。

　このアレックス、映画冒頭に登場する時の風貌がサングラスにロングコートという『男たちの挽歌II』（87）のチョウ・ユンファな時点で、既に高尚な映画ではないことが確定してしまう。しかもボディコン（死語）の美女たちと繰り広げる銃撃戦では二丁拳銃を撃ちまくる。やはり『男たちの挽歌II』なのだ。しかし、この銃撃戦のテンションが異様に高く、後半になると、ほとんどのシーンが銃撃戦で埋め尽くされる。しかもアクションにも趣向が凝らされているため飽きさせない。

　中でも有名なのが、ホテルで敵に追い詰められたアレックスがマシンガンで床を打ち抜き、階下に脱出するというシーンだ。こんなマンガのようなアクションを、哲学的テーマを目指すSF作品でやってのけようという監督の勇気にも頭が下がるが、さらに隣の部屋では女性サイボーグと悪党たちが至近距離で何百発もの弾を撃ちあい、体が火を噴きはじめるアクションが同時進行、カオスこの上ない最高のシークエンスに仕上がっている。

　「この銃撃戦は私の監督作の中でも最高のアクションシーンだろう。やりたかったことをすべて詰め込んだんだ。数え切れないほど空砲を撃ち何百もの爆竹を使った。あの場で演技していた女優とスタントマン達には感謝の意を表するよ。体に爆竹を巻きつけたスタントマンには特にね」