2019.12.01
『ROMA』に続くNetflixオリジナルの日常劇
作品の中身の話をする前に、注目しておきたいのが、本作がNetflixのオリジナル映画であるということ。アカデミー賞外国語映画賞・監督賞・撮影賞に輝いた『ROMA/ローマ』(18)に続く作品群の1本で、いわゆる「肝いり」の映画といっていい。公開(配信)時期的にも、人選的にも、もちろんクオリティも、アカデミー賞を視野に入れていたことは間違いないだろう。
元々オリジナルコンテンツに積極的なNetflixだが、2019年は特に力を入れていた。マッツ・ミケルセンが伝説の暗殺者に扮した『ポーラー 狙われた暗殺者』、怪作『ナイトクローラー』(14)のチームが再結集した『ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー』、ベン・アフレック、オスカー・アイザック、チャーリー・ハナムらが共演した『トリプル・フロンティア』、ケビン・コスナーとウディ・ハレルソンが共演した『ザ・テキサス・レンジャーズ』、飛ぶ鳥を落とす勢いのティモシー・シャラメが主演した歴史大作『キング』、日本を舞台にしたオスカー女優アリシア・ヴィキャンデル主演作『アースクエイクバード』、スティーヴン・ソダーバーグ監督作『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』、マイケル・ベイ監督作『6アンダーグラウンド』、そしてマーティン・スコセッシ監督の最新作『アイリッシュマン』。劇映画に絞っただけでも、錚々たる作品が揃っている。
『マリッジ・ストーリー』
同じ配信サービスでいえばアマゾン・スタジオも、近年『ビューティフル・デイ』(17)『ドント・ウォーリー』(18)『ビューティフル・ボーイ』(18)『サスペリア』(18)『COLD WAR あの歌、2つの心』などを製作しているが、ボリューム感はNetflixに遠く及ばない。
Netflixが重視しているのが、クリエイターだ。アルフォンソ・キュアロン、マーティン・スコセッシ、スティーブン・ソダーバーグ、マイケル・ベイ……オリジナルシリーズにも目を向ければデヴィッド・フィンチャーなど、一線で活躍する監督たちを多く起用。日本ではそこまでの知名度はないかもしれないが、『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック監督も彼らに連なるメンバーと認められているからこそ、本作の製作につながったのだろう。
そしてまた、上記の作品がエッジーなものが多いのに対し、『マリッジ・ストーリー』は日常に根差した普遍的なドラマ。うがった見方かもしれないが、『ROMA/ローマ』以来久々の良質な日常劇ともいえるのだ。