ビッチ!車!ロックンロール!
しかし何と言っても。何をおいても。本作の魅力は宇宙人の性格設定に尽きる。
まず、そもそも「悪い宇宙人」が悪くあるために悪さを重ねているようにしか思えない点だ。凡庸な良識人に取り憑くと強盗を重ねる。その体が壊されてしまい、たまたま近くにいた病人に取り憑くと、レコード店で万引き三昧。咎められたら相手を撲殺。レストランでハードロックをラジカセでガンガン流しながら食事をしつつ、店の前を通るフェラーリを追って店を飛び出し、そのまま車を強奪。と、とにかく悪いことだけを重ねていく。金を奪っても金は使わない。“金を奪う”こと、そのものが目的という本末転倒さだ。
『ヒドゥン』(c)Photofest / Getty Images
さらに、女性にも目が無いのだが、やはり本末転倒さは健在だ。フェラーリで道を流し、見よう見まねでナンパをしてみて失敗すると、腹いせとばかりにストリップバーでイカすビッチのストリッパーを乗っ取る。快楽を求めるとか、子孫繁栄のために女性を狙っているのでは無い。単に“イカすビッチ”な状態の女性が好きなだけなのだ。
これらを、その制作過程を念頭に考えてみれば、その蛮勇が立ち上がってくるだろう。フェラーリを出したい。ハードロックをガンガンかけたい。イカすビッチも登場させたい。SFで。
そんなコンビニ前でたむろする不良が思いついたような与太話を「そーいうのが好きな宇宙人」と、やはり不良が思いついたような設定で押し通してしまうのだ。