最もヒップホップ・カルチャーに影響を与えた映画
監督の交代劇、レイティングに関する攻防などを経て、やっと公開された『スカーフェイス』。しかし、公開当時の評価は最悪だった。オリジナルの『暗黒街の顔役』が有していたノワール風味は跡形もなく消え失せ、品性のカケラもない悪逆無道ムービーにリ・ボーン。評論家は「『暗黒街の顔役』への冒涜だ!」とコキ下ろし、デ・パルマはラジー賞のワースト監督賞にノミネートされてしまう。
だが、アメリカの観客たち…特に黒人、ヒスパニックなどのマイノリティ層の反応は違った。トニー・モンタナの欲望に忠実な生き方、飽くなき上昇志向、自分の信念を貫く唯我独尊ぶりに共感を覚えたのだ。
『スカーフェイス』(C) 1983 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
「この国はまず金だ。金が力をつくる。力があれば女を抱ける」
「この世の中では、タマのある奴が命令を下す」
「(あと何が欲しい?という問いに対して)世界だよ。世界の全てだ」
彼のセリフは、ブラザーたちのハートを鷲掴みするパンチラインばかり。そしてこの作品は、トニー・モンタナと同じように、社会の底辺から人生の大逆転を狙うギャングスタ・ラッパーにも大きな影響を与えた。
「Warning」PV
パフ・ダディは「『スカーフェイス』は64回観てるぜ!」と豪語し、ノトーリアス・B.I.G.は「Warning」のPVで映画へのオマージュを捧げ、ゲトー・ボーイズのブラッド・ジョーダンはその名もズバリ「スカーフェイス」に改名。今や『スカーフェイス』は、“最もヒップホップ・カルチャーに影響を与えた映画”として揺るぎない地位を築いているのだ。