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『アトミック・ブロンド』80年代ヒットナンバーが彩る、ベルリンの壁崩壊へのカウントダウン

『アトミック・ブロンド』80年代ヒットナンバーが彩る、ベルリンの壁崩壊へのカウントダウン


ジョージ・マイケルの“Father Figure”と白いコート



 また、シャーリーズ・セロンが西ベルリンのアパートメントに足を運ぶや否や、そこに警官たちが次々と踏み込んでくる場面がある。ここで流れるのはジョージ・マイケルの”Father Figure”。そのスローなリズム、伸びやかな歌声とは裏腹に、スクリーンでは決死の格闘と脱出劇が繰り広げられ、その強烈なギャップがかえって鮮烈なインパクトをもたらす。




 ちなみに、ここでセロンは真っ白なコートを着用しており、迫り来る死闘を予期して「こんな格好してくるんじゃなかった」とボヤくのだが、面白いことに80年代に発表されたこの楽曲のPVにも、真っ白なコートを着込なした女性が登場する。もしかするとセロンの衣装はこのイメージに合わせて考案されたものなのかもしれない。




 他にも、リフレックスの”The Politics of Dancing”、デペッシュ・モードの”Behind The Wheel”、ザ・クラッシュの”London Calling”などの英国勢の楽曲が鳴り響き、かと思えば、マリリン・マンソンとタイラー・ベイツによる”Stigmata”、『マグノリア』でもおなじみのエイミーマンが80年代に在籍していたティル・チューズデイのヒット曲”Voices Carry”など、アメリカ勢も決して負けてはいない(この英米の駆け引きは映画の内容ともシンクロ)。いずれの楽曲も当時ベルリンで流れていたとしておかしくないものばかり。今改めて耳にすると甘酸っぱいノスタルジーを感じると同時に、一周巡って逆にカッコよくも思えてしまうのが不思議でならない。


 たとえそこに高く「壁」がそびえ立っていたとしても、カルチャーの流れは止められない。特に音楽は形がない分だけ、空気と同化してスルリと流入する強みがある。その点、本作に80年代のニューウェーブ、パンク、ポップスのヒットソングが溢れかえる様は、あたかも壁に空いた小さな穴から音楽が絶え間なく沁み出しているかのよう。その勢いに乗せて次第に亀裂は四方八方へと広がっていく。そうやって、カルチャーレベルで壁がゆっくりと崩壊していく臨場感を体感できるのも、『アトミック・ブロンド』の醍醐味と言えるのではないだろうか。





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