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『ザ・フライ』鬼才クローネンバーグのおぞましくも悲しい傑作はこうして生まれた!

『ザ・フライ』鬼才クローネンバーグのおぞましくも悲しい傑作はこうして生まれた!


アーティスト性と娯楽性の幸福な融合



 ハリウッド映画らしく、エンディングには人気アーティストによる主題歌も用意されていた。英国で1970年代から80年代前半にかけて活躍したバンド、ロキシー・ミュージックのボーカリスト、ブライアン・フェリーが提供した楽曲「Help Me」を、クローネンバーグはとても気に入った。が、この映画のエンディングにふさわしいかどうかを考えたとき、それは却下されることになった。フェリーのこのナンバーは、バーのシーンでわずかに聞こえる程度。サウンドトラック盤にも収められなかったこの曲は、後にフェリーのコンピレーションアルバムに収められ、音源として日の目を見る。



 『ザ・フライ』は劇場公開された後、これまでのクローネンバーグ作品以上に大きな反響を呼んだが、中にはクローネンバーグをとまどわせる意見もあった。それは、ここで描かれるアクシデントがエイズをモチーフにしているのでは……というもの。1986年はエイズが社会問題化していた時期であり、多くの観客はそんな現実に本作をオーバーラップさせた。しかし、クローネンバーグは、そんな見方を一蹴する。彼によると、主人公の変容は老化のメタファーとみるのが正しいとのこと。


 本作の後、クローネンバーグはハリウッドと付かず離れずの関係を保ちながら、『裸のランチ』(91)『クラッシュ』(96)『イースタン・プロミス』(07)などの意欲的な作品を次々と送り出し、商業主義に染まることなく自身のアートを追及するフィルムメーカーとして名声を高め、世界中の映画人の尊敬を集めていく。


 振り返ると『ザ・フライ』は、そんな彼の妥協のない姿勢と、ハリウッド映画特有のエンタテインメント性が幸福なカタチで融合したように思える。まだクローネンバーグ作品に触れたことがない方なら、まずはここから入ってみることをお勧めしたい。ファンならば、鬼才の戦線復帰を待ちつつ、この映画の豊潤さを改めて感じてみてはどうだろう。



文: 相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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(c)Getty Images

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