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『ジョジョ・ラビット』外見は不謹慎、中身は眩い愛。「戦争」を問い直すラブストーリー

『ジョジョ・ラビット』外見は不謹慎、中身は眩い愛。「戦争」を問い直すラブストーリー

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敢えての肯定――戦争に「憧れる」少年のリアルな心情描写



 『ジョジョ・ラビット』の特異性・斬新性は、やはりそのアプローチにあるだろう。戦時下の日常を描いた作品はイタリア映画『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)や日本映画『この世界の片隅に』(16)など各国で作られているが、本作もその流れを汲みつつ、立ち位置がやや異なる。戦争に対して中立でも否定でもなく、肯定してしまうのだ。先ほど「勇気がある」と評したのはこのためで、『ジョジョ・ラビット』は当時のリアルを描くためにまず1回戦争を「是とする」のである。


 ただしこの戦争の肯定には限定的な“枷”が設けられており、大人たちと子どもたちでニュアンスが異なっている。ロージーもクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)も社会的なルールに則って戦争を是としているが、本心は別。戦争の悲惨さや残酷さを知っているからこそだ。


 一方、ジョジョや親友のヨーキー(アーチー・イェーツ)は戦争のリアルを知らないからこそ、敵を倒すヒーローがナチス・ドイツだと信じて疑わない。ユダヤ人はモンスターだと刷り込まれ、広報担当のミス・ラーム(レベル・ウィルソン)に扇動されるままに本を燃やす。ただ同時に、ジョジョは本能的に「これは道徳的に正しいだろうか?」という躊躇も見せており、「ウサギを殺せない」シーンへと繋がっていく。憧れのヒーローではあるが、心の底からは賛同できないという小さな違和感が序盤から仕掛けられており、ロージーの教えやエルサとの出会いによって、ジョジョが自分だけの正義を見つけていく展開が見事だ。




 同時に、子どもたちの戦争や兵士への憧れにハッとさせられもする。例えばアメリカ映画であれば志願兵なんてものはごまんといるし、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11)の主人公スティーヴもそう。『ハクソー・リッジ』(16)の主人公デズモンドでさえ、「武器は持たない」の誓いは持ちつつも衛生兵として志願する。ナチス・ドイツを倒したい、戦争を終わらせたいと思う若者たちが戦地を目指す姿は、映画の歴史的にもメジャーだが、これと同じ現象が当時のドイツでもあったのだ、というごく当たり前の“事実”を、この映画は鋭く描いている。「愛国心」は、どの国民にも当然のように存在するのだ。


 あの時代に幼少期を過ごしたら、殺戮を行う彼らをヒーローだと思っていたかもしれない――。今でこそ、語られるのは禁忌であり、看過できない思考ではあるのだが、それを「間違っている」と言い切れるのは後世の人間だけだ。ロージーが「今のあの子は、かわいかったころのお化けなのか」と悩み、エルサが「あなたはナチスじゃない。おかしな軍服が好きな10歳の子どもよ」と訴える姿からは、時代や社会が純真な子どもの思想統制を行ってしまったという「罪」が痛いほどに伝わってくる。




 美術に関しても従来の戦争映画とは大きく異なっており、ウェス・アンダーソン監督のようにカラフルでかわいらしい街並みや色調がデザインされている。第二次世界大戦を描く映画では灰色の街並みや暗く重いトーンが刷り込まれてきたが、この映画ではそうではない。しかしだからこそ、街中に反逆者たちの死体が吊るされていて、士気高揚のポスターがべたべたと建物に貼られている光景に心がえぐられる。ワイティティ監督は、視覚的にも「ギャップ」を効果的に用いている。



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