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演技も物語も動き続ける――『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』が導く、虚空の「二人芝居」

演技も物語も動き続ける――『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』が導く、虚空の「二人芝居」

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注目のVFX工房が創出した「変化する試練」



 『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』がただの「映像売り」映画と一線を画すのは上に挙げたような緻密な物語と感情の有機性があるからだが、本来の映像表現も見ごたえ充分。物語の臨場感を演出する見事な音響も相まって、実際に宙に浮いているような体験を呼び起こしてくれる。


 突然だが、RODEO FXというVFX工房をご存じだろうか? 実はこちら、『ブレードランナー 2049』(17)や『グレイテスト・ショーマン』(17)、『ファンタスティック・ビースト』シリーズ、『IT』二部作、『ゲーム・オブ・スローンズ』『ストレンジャー・シングス』シリーズなどに関わっているエキスパート集団。2006年にカナダで創業したまだ若い会社だが、この14年で現在のハリウッドには欠かせないVFX工房の一つにまで上り詰めた。



 本作では上空に行くにしたがって「空気が薄くなる」「気温が下がる」といった変化が起こり、ジェームズとアメリアの髪が凍り付き、息が震え、次第に憔悴していく。視覚的にも「時間の経過」が手に取るようにわかるのだ。眼前に広がるのは、高度1万メートル、気温マイナス50度の世界。気球の機体にも霜が降り、強風が吹きつけて損傷し、軋み、計測器が故障し、さらに予測不能の悪天候が幾度となく襲い掛かるさまを、映像がものの見事に物語る。


 エディとフェリシティの奥深い演技は大きな見どころだが、2人を徹底的に追い込んでいく映像のクオリティもまた不可欠なピースだ。むしろお互いの表現力を競い合うように、演技と映像がせめぎ合う。本作では大半の飛行シーンが空中で撮影され、キャストと撮影監督が一緒に気球に乗り込んだという。そのためか、演技と映像の「ドッキング感」がことさら真に迫っている。さらに、気球から下を見下ろすアングルなど、高所恐怖症の人なら縮み上がりそうな映像が生々しく続く。ネタバレを避けるため多くは語らないが、後半にはあるアクロバティックな見せ場も用意されており、多くの観客が度肝を抜かれることだろう。




 エディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズの進化を決定づける再共演。現在進行形ながら、回想も盛り込んだ独自の物語アプローチ。そして、観る者を「空中にいるのではないか」と錯覚させるほどリアルに、刻一刻と変化していく「生きた空」を具現化した映像――。この3本柱を骨格とする『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』という“気球”は、そう簡単には壊れない。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema



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作品情報を見る



『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』

2020年1月17日(金)全国ロードショー

2019年/イギリス・アメリカ/101分/シネスコ/5.1ch

英題:The Aeronauts/字幕:風間綾平

配給・宣伝:ギャガ

公式サイト:gaga.ne.jp/intothesky/

(c)2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

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