映像に加え音響も、ただただ恐怖でしかない83分
さて、残る3人はいなくなったふたりを探してレザーフェイスの館に近づいていく。この後の展開は、ある程度想像できると思うので詳しくは語らないが、注目すべきシーンについてふれておきたい。まず、暗くなった森の中、チェーンソーを唸らせて追ってくるレザーフェイスから、サリーが必死に逃げ回るシークエンス。限られた照明の中で追いつ追われつを描いたこの場面で、サリー役のマリリン・バーンズは実際に枝に腕を、雑草に脚をからめとられながら全力疾走した。彼女の腕にできた出血や傷は本物だ。
そしてクライマックス、戦慄のディナーシーン。このちょっと前のシーンで、レザーフェイスには家族がおり、その誰もが彼に負けず劣らず狂気に憑かれていることが判明するが、彼らが勢ぞろいするのがこの場面だ。人面皮でつくったランプシェード、天井からつるされた人骨、そして“じい様”と呼ばれる、骨と皮だけでただ生きているだけの老人。さんざんおぞましいものを見せられたあげく、さらにすごいものを見せられるのだからこれは驚くしかない。

『悪魔のいけにえ 4Kデジタルリマスター 公開50周年記念版』©MCMLXXIV BY VORTEX,INC.
ちなみに、撮影は昼間に行われたが、夜のシーンであるため遮光カーテンがかけられた。外気は40℃近くまで上昇したが、閉め切った屋内で照明を炊き、スタッフ&キャストが入り乱れるのだからさらに温度が上がり、特殊効果もうまく作動しない。サリーが指をナイフで切られて出血する場面があるが、これも特殊効果が働かず、バーンズは実際に指を切ることになったという。
85分に満たない短い尺だが、ここまでの解説だけで、どれほど濃密に不穏が詰まっているかわかってもらえただろう。ホラーの歴史を変えたといわれる、この傑作ハイクオリティ映像を、劇場で堪能できる機会はそうそうない。チェーンソーの響きに加え、ガソリン発電機のモーター音、レザーフェイスが登場する度に延々と響く悲鳴、鶏の鳴き声、そして不協和音と、神経を逆なでする音の演出も劇場の音響ではよくわかる。朝焼けの中でレザーフェイスがチェーンソーを振り回す、トラウマになりそうなラストシーンともども、ぜひ一度は体験して、究極の恐怖を味わっていただきたい。
文:相馬学
情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。
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配給:松竹
©MCMLXXIV BY VORTEX,INC.