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『初恋』エンタメこそ映画の華――喜劇も暴力もタランティーノも詰め込んだ三池流・純愛活劇

(C)2020「初恋」製作委員会

『初恋』エンタメこそ映画の華――喜劇も暴力もタランティーノも詰め込んだ三池流・純愛活劇

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役者に火をつける三池監督のカリスマ性



 今回は主に構造面に絞って書き連ねてきたが、物語の中身においては、描かれていることがすべてであり、それを観た人々の内に沸き起こる興奮こそが、『初恋』の健全な楽しみ方なのだと感じている。「どういうことが起こる」物語なのかが重要なのではなく、「どういう感情になる」かが肝要。つまり、本作においては「楽しむ」100%でいいのだ。観客それぞれが個別に有する、自分だけの感覚で。


 映画を「論じる」ことは、作品の面白さを引き出し、深く理解する素晴らしい行為だが、観る者のフットワークが重くなってしまうこともまた事実。『初恋』には、そういった雰囲気は似合わない。例えば自分は『初恋』を初めて観たときに「後半のあの展開は『ベイビー・ドライバー』(17)だ!」「この謎のカッコよさは、『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』の再来だ!」と感じたが、これらを比較するのではなく、『初恋』を観ている瞬間に心に生じたワクワク感を伝えたいと自然に思った。それは恐らく本作が、生粋のエンターテインメントだからだ。考える間もなく、感じる。その快感が、どのシーンにも詰まっている。



『初恋』(C)2020「初恋」製作委員会


 本稿の冒頭で「三池監督の作品はてんでバラバラ」と書いたが、1つだけ決定的な共通項がある。どの作品を観ても、出演者の顔が楽しそうなのだ。それはシリアスな作品であっても、コミカルな作品であっても同じ。『初恋』もまた、キャストたちの弾けた演技に、現場の“熱”が刻まれていた。


 これまで多くの出演者が「三池監督は、役者をやる気にさせてくれる」と語っているが、キャスト・スタッフのみならず作品に関わる全員から本気を引き出す、熱を与える能力というのが、三池監督はずば抜けているのだろう。そしてその熱は、観客にも確かに伝播していく。


映画は人を描き、人が作るもの。そして、人に届けるもの――。

「初恋」ならぬ、万人に向けた“愛”に満ちたラブストーリーだ。




文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema



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『初恋』

(C)2020「初恋」製作委員会

2020年2月28日(金)、全国ロードショー

公式サイト:https://hatsukoi-movie.jp/

公式Twitter:@hatsukoi2020

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