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『ベルリン・天使の詩』で鬼才ヴィム・ヴェンダースが見た、天使の正体とは?

(c)Photofest / Getty Images

『ベルリン・天使の詩』で鬼才ヴィム・ヴェンダースが見た、天使の正体とは?

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天使のラブストーリーに息吹を吹き込んだ俳優たち



 本作の制作にヴェンダースが設定した期間はわずか9か月。ハントケはセリフを断片的に送り続け、ヴェンダースは完成脚本がないまま撮影に着手した。言うまでもなく、俳優にとって脚本がないのは困惑を避けられない事態だ。しかし、『アメリカの友人』(77)に続いてヴェンダースとタッグを組んだ、恋する天使ダミエル役のブルーノ・ガンツはこれをこなした。中年男の姿は天使という言葉からくるイメージとは、かけ離れた感もあるが、モノクロの映像美の中に、彼の落ち着いたたたずまいが映えた。


 ヴェンダースの公私にわたる天使ソルヴェイグ・ドマルタンは元々は製作スタッフだったが、演劇を学んでいたこともあり、本作のマリオン役で女優デビューを果たす。パリに住んでいたころには体力づくりのために、空中ブランコの学校に通っていたこともあったというから、この役にはうってつけだった。彼女は3か月の本格的な訓練を積んで、この技をプロのレベルにまで高めた。「その気になれば、彼女はサーカスでも食べていけるよ」と、ヴェンダースは太鼓判を押す。



『ベルリン・天使の詩』(c)Photofest / Getty Images


 低予算映画ではあるが、本作にはハリウッドのスター俳優も出演。ピーター・フォークは『刑事コロンボ』(68-78/89-03)でおなじみの人気俳優だが、映画ファンにはニューヨークインディーズの鬼才ジョン・カサヴェテス作品の常連俳優として認識されている。カサヴェテスを敬愛するヴェンダースはフォークに直接電話をかけて、この物語に、なぜフォークが必要なのかを説明し、出演の承諾を得た。「かつて天使だったということに信憑性をあたえる要素を、彼は持っていた」とヴェンダースは語る。実際、フォークのどこかトボケた柔和なキャラクターは、元天使の俳優というキャラクターにハマっているし、ユーモラスで温かい雰囲気を映画にもたらしている。



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