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『ベルリン・天使の詩』で鬼才ヴィム・ヴェンダースが見た、天使の正体とは?

『ベルリン・天使の詩』で鬼才ヴィム・ヴェンダースが見た、天使の正体とは?


先鋭的なロックと偉大な名匠たちから得た“天使のまなざし”



 本作の重要な舞台として、ライブハウスが2度、劇中に登場する。日本人女性が登場する場面として記憶している方も多いのではないだろうか。そこでパフォーマンスを繰り広げるのは、最初の場面ではクライム&ザ・シティ・ソリューション、2度目がニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ。どちらのバンドもオーストラリア出身で、当時はベルリンに拠点を置いて活動していた。15歳の頃からロック・ミュージックが大好きだったヴェンダースは、彼らのサウンドに新しいものを感じ、本作の撮影に招聘した。


 とりわけ、クライマックスに登場するニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズは強烈な印象を残す。楽曲”フロム・ハー・トゥ・エタニティ”の荒々しさもさることながら、フロントマン、ニック・ケイヴの鬼気迫るパフォーマンスは圧倒的だ。ヴェンダースは、「ニックこそ、ベルリンの天使だ」と発言したこともあるが、映画の重要な局面に彼を配置したことは、そんな気持ちの表れだろう。ちなみに“フロム・ハー・トゥ・エタニティ”は、映画の日本公開の翌年に行なわれた来日公演でも披露され、現在もケイヴのライブの定番曲となっている。



 この映画に貢献した天使は多いが、ヴェンダースが本作を捧げた3人の巨匠、小津安二郎、フランソワ・トリュフォー、アンドレイ・タルコフスキーは、彼に多大なインスピレーションをあたえた点で、まぎれもない天使だ。本作ではダミエルが天使から人間になった時を境に、モノクロ映画がカラーへと変わるが、モノクロ時の映像の詩的な美しさは、これらの巨匠たちの作品にも通じる。彼らは、まさしく天使のまなざしを持っていたのだ。


 本作の成功後、ヴェンダースは念願の『夢の涯てまでも』をはさみ、続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(93)を製作。『ベルリン・天使の詩』は『シティ・オブ・エンジェル』(98)のタイトルでハリウッド・リメイクもなされ、こちらも好評を博した。ハントケは2019年にノーベル文学賞を受賞。ドマルタンは2007年に、ガンツは2019年に、それぞれ惜しまれつつ世を去ったが、今も天使のようにベルリンの街を見つめているような、そんな気がしてならない。



文: 相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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(c)Photofest / Getty Images

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