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『ブレードランナー』英国からやってきた男、リドリー・スコットの孤独な闘い
「ファイナル・カット」とは何か?
悪夢のような撮影を何とか終え、編集を経て試写を迎えた『ブレード・ランナー』であるが、その結果は芳しくなかった。とにかく難解で、よく理解できなかったという意見が多かったという。製作陣は大慌てで脚本家にナレーション原稿を書かせ、ハリソン・フォードを呼び出してナレーションの追加録音を行った。そして、状況説明をわかりやすくするように追加編集を施した。リドリー・スコットはナレーションには反対だったというが、製作陣はファイナル・カットの権利を行使して作品に手を加えていったのである。
前述の通り「ファイナル・カット」とは最終編集権のことであり、当時プロデューサーではないリドリー・スコットはこの権利を持っていなかったのだ。
そうして1982年『ブレードランナー』は公開された。しかし当時大ヒットしてた『E.T』などのいわゆる「明るいSF」と対照的な本作はそれほど観客には受け入れられず、ヒットに恵まれることはなかった。評価も賛否両論で、これまで見たことのない圧倒的な世界観に熱狂する人々もいれば、難解で退屈と否定する人々も少なくなかったという。
『ブレードランナー』TM & (c)2017 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.
あれほど闘い抜いて撮り上げた作品が、完成直前でファイナル・カットを行使され、自分の意思とは違うものが世に出てしまったリドリー・スコット。彼の悔恨は想像に難く無い。
しかしその後、着実に巨匠への階段を駆け上がっていったリドリーは、自身で『ブレードランナー』を再編集する機会に恵まれるのである。1992年に『ディレクターズカット』を、2007年にはデジタルリマスターを施したその名も『ファイナル・カット』を製作。公開から実に25年の時を経て、リドリー・スコットが本当に作りたかったものがようやく完成したのである。
映画製作には膨大な数の人間が携わることとなる。映画は誰のものか?その答えは決して一つではない。しかし、35年以上経った今でも『ブレードランナー』が色褪せない輝きを放っているのは、リドリー・スコットの闘いがあったからこそと言っても、過言ではないだろう。
参考資料:『デンジャラス・デイズ:メイキング・オブ・ブレードランナー』
文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
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