2020.03.26
不滅となった作品
本作は完璧なプリンス自伝映画であるが、しかしそれは完璧な映画作品という意味ではない。プリンスは本作でアカデミー賞歌曲・編曲賞を受賞しているが、最低な映画に与えられる不名誉なラズベリー賞にて、アポロニア・コテロが最低新人賞、そしてプリンス自身もアポロニアのために書き下ろした「セックス・シューター」という曲で最低主題歌賞にノミネートされてしまっている。それでも、誰が何と言おうと本作は完璧なプリンス自伝映画だった。
アポロニア「セックス・シューター」
今回の記事執筆にあたり、プリンス没後初めて、本作を最初から最後までしっかりと鑑賞した。プリンスがステージで「パープル・レイン」を歌うシーンから涙が止まらなくなった。多くの本物のミュージシャンが出演していたので、未熟なセリフ回しや、若い監督らしい不慣れな演出も確かにあったかもしれない。でも、あの「パープル・レイン」のシーンは、何度見ても感動してしまう。「パープル・レイン」を歌うまでに至る経緯が完璧だからだ。
熱狂的なファンが、プリンスが他界した時に「プリンスは不滅だ」と言っていた。熱狂的ファンらしいありきたりの言葉かもしれないが、あの絶頂期がこのように完璧な姿でフィルムに残されており、筆者のように何年経っても感動して涙を流しながら見ている人間もいる。
本作は、永遠に残り続ける作品だ。実際にアメリカ国立フィルム登録簿入りを、2019年に果たした。これはアメリカのフィルム保存委員会が、半永久的に残していきたい作品として認めたということである。しかも、本作のサウンドトラックもアメリカ国立録音資料登録簿に登録された。やはりプリンスは不滅だったのだ。
以前、雑誌「映画秘宝」(洋泉社)を中心に執筆。著書『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)が発売中。
(c)Photofest / Getty Images