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『映像研には手を出すな!』マンガの「個性」とアニメの「技巧」が融合した、げに面白き“最強の世界”

『映像研には手を出すな!』マンガの「個性」とアニメの「技巧」が融合した、げに面白き“最強の世界”

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原作者がアニメーターとして参加



 では、原作の大童澄瞳についても少し言及していこう。大童のインタビュー等によると、『映像研には手を出すな!』というタイトルは『明日に向って撃て!』(69)や『北北西に進路を取れ』(59)、『ダイヤルMを廻せ!』(54)、『現金に手を出すな』(54)、『俺たちに明日はない』(67)といった名作映画の邦題への憧れから生まれたという。


 この辺りのタイトルがすらすらと出てくるところに大童のシネフィルぶりがうかがえるが、小学生の頃からアニメ好きで、中学生からは家族の影響もあって絵をたしなみ、高校では映画部に所属し、その後美術系の専門学校に進学して絵画を探求し、マンガ制作も行い……と創作活動に明け暮れる人生を送ってきたようだ。ちなみに、大童のマンガ家デビューのきっかけは、同人誌即売会に参加した際にマンガ雑誌の編集者から声をかけられたことがきっかけだという。


 絵画、映画、アニメ、マンガ……。『映像研には手を出すな!』の原作には、大童の多彩な経験が存分に注入されており、物語のメインの舞台となる水上都市的な芝浜高校のデザインや、凝りに凝った設定画の数々、吹き出しにパースを付けたり文字をにじませたりといった斬新な三次元的演出など、他の作品にはなかなか見られない工夫が凝縮されている。




 デザイン性が高いマンガといえば、擬音のレイアウトや字体がポスターアート的な記号として機能している『ハイキュー!!』や、前出の『ピンポン』等が挙げられるが、マンガ『映像研には手を出すな!』は、それらとはまた違った手法を編み出した。浅草の「ですぜ」や「じゃよ」といった愛嬌のある独特の口調や生き生きとしたセリフ回し、全てのコマに背景があるわけではなく、人物と吹き出しだけの白背景が多い(描き込む部分と敢えて一切描かない部分の差がはっきりしている)のもこの作品の特長だ。


 これらの「個性」を尊重しつつ、湯浅監督の「業(わざ)」が上乗せされたものが、アニメ『映像研には手を出すな!』といえよう。物語だけを切り取っても十二分に面白いのだが、そこには原作者の「才能」と監督の「技巧」がフュージョンしたことで生まれた「最強の世界」がある。まるで、ずっと独りだった浅草が、金森という「プロデューサー」、水崎という「アニメーター」を得て覚醒し、「監督」へと成っていったように。




 余談だが、アニメ『映像研には手を出すな!』のエンディングムービーには、大童がアニメーターとして参加している。原作者がアニメーターとして参加する例は『名探偵コナン』などが有名だが、こういった部分にも、原作者とアニメスタッフの幸福な関係がにじんでいるようだ。



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