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『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』映画界を席巻する「モダンゾンビ」はいかにして生まれたか

『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』映画界を席巻する「モダンゾンビ」はいかにして生まれたか

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ジョージ・A・ロメロが生み出したモダンゾンビ



 ゾンビの代表的な特徴を3つ述べよ―という設問に、あなたはなんと答えるだろう。「人間の肉を食べる」「頭を破壊されるまで死なない」「噛まれた人間もゾンビ化する」といったあたりが模範解答ではないだろうか。実はこの特徴は『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』で初めて提示されたゾンビの「キャラクター」なのだ。


 それまでもホラー映画にはゾンビは登場していたが、それはハイチ発祥のヴードゥー教の信仰に由来するヴードゥーゾンビと呼ばれるものだった。ヴードゥーゾンビは特殊な薬品で自我の崩壊した人間であり、操り人形のようなもの、ホラー映画の中では下っ端的なモンスターだった。この地味なモンスターをホラー映画のメインキャストに押し上げたのがジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』だった。


 同作のゾンビ―「モダンゾンビ」は先述した特徴を持ち、人間の肉を求め、不気味な唸り声をあげながらさまよい歩く。彼らは仲間を増やしながら、生き残った人間たちを追い詰めていく。




 この描写には殆どのゾンビ映画が則っている。というか、このルールからは外れたものは「ゾンビ」として認められないだろう(ちなみにロメロは「走る」ゾンビは好きではないらしい)。さらに『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』には、後のゾンビ映画には欠かせない重要なお約束もしっかりと網羅されている。


 ゾンビが発生し、野中の一軒家に逃げ込んだ7人の男女(子供含む)。家はゾンビに囲まれ、いつなだれ込まれても不思議ではない。ラジオからは断片的な情報しか入ってこない。人々は脱出法を模索するが、仲間割れをはじめ、犠牲者が出る…。


 3行で書けるあらすじの中に、後に作られる何百本というゾンビ映画のエッセンスがほぼ全て詰まっていることがお分かりだろう。


 ロメロによるゾンビのキャラクター造形とストーリー構造は後の作品に絶大な影響を与えたが、実はそれらは偶然の産物という側面もあった。



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