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『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛

(c)Photofest / Getty Images

『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛

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実在の人物たちの不遇な人生



 『フィールド・オブ・ドリームス』の原作となった小説「シューレス・ジョー」を手がけたW.P.キンセラは、カナダの作家。名前は主人公レイと同じキンセラだが、物語はあくまでもフィクションだ。彼は多くのインタビューで「人生は難しく、そして死にゆくものだ」と繰り返し語っていたことで知られている。そしてこの言葉は、『フィールド・オブ・ドリームス』に登場する実在の人物たちの不遇な人生とも重なるのである。


 映画の冒頭、レイが父ジョンの人生を語るくだりでは、“シューレス”ジョー・ジャクソンが「ブラックソックス事件」に関わり、球界を追放された衝撃について説明されている。MLBワールドシリーズで優勢だったシカゴ・ホワイトソックスが敗退し、シンシナティ・レッズがシリーズを制した1919年。その裏ではマフィアも関与する八百長が行われていたことが発覚したのだ。


 この経緯は『フィールド・オブ・ドリームス』の前年に全米公開された、ジョン・セイルズ監督の『エイトメン・アウト』(88)で詳しく描かれている(残念ながら当時日本では劇場未公開扱いだった)。



『フィールド・オブ・ドリームス』(C) 1989 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.


 レイ・リオッタが演じている“シューレス”ジョー・ジャクソンは、この八百長事件によって野球界から追放された、ホワイトソックス主力選手8人のうちのひとり。後年、嘆願書による汚名回復の復権運動が起こり、『フィールド・オブ・ドリームス』も「ジョー・ジャクソンは八百長に関わっていなかったのではないか?」という同様の視点で描かれている。しかし、未だ復権していないという厳しい現実があり、彼は現在もアメリカ野球殿堂で対象外扱いになっている。


 また、バート・ランカスターが演じた“ムーンライト”アーチボルト・グラハムも実在の人物。ニューヨーク・ジャイアンツの選手として、1905年6月29日に一試合だけ出場。8回の守備で出場し、打順が回ってこないまま試合は終了。打撃成績のない状態でマイナーリーグへ移り、1908年に野球人生を終えている。


 映画の中でも描かれているように、グラハムはメリーランド大学で医学の学位を取得。ミネソタ州のチザムで開業医となった。そして、鉱山労働者の子供たちに無料の眼科検診を行い、メガネを無料で支給するなど地元に貢献したと伝えられている。『フィールド・オブ・ドリームス』で描かれている“ムーンライト”アーチボルド・グラハムの生涯は、原作者のW.P.キンセラがチザムへ赴き、町の人々に取材して集めた情報が基になっている。まさに、映画そのままなのだ。



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